――たどり着きたくない?

【助川】『色彩を持たない……』で灰田君をもう1回出してきちゃうと、多分、緑川と灰田君のお父さんの話にオチをつけなきゃいけなかったでしょう。無理をしたらそれもできたと思うんですが、その準備はなかったのだと思います。

――次作は決着がつくことになるんでしょうか。

【助川】そういうものをやるんじゃないかなと思います。やるとしたら新潮社から出す長編でしょうね。本にも書きましたけど、村上春樹には新潮社から大長篇、講談社から短い実験作という作品発表のサイクルがあって、今回は講談社の代わりに文藝春秋から出したというかたちになっています。

――わかりました。じゃあ次の長編は。

【助川】お父さんの問題を……

――新潮社から。

【助川】ということにしておきましょうか。

日本文学研究者 助川幸逸郎
1967年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、横浜市立大学のほか、早稲田大学、東海大学、日本大学、立正大学、東京理科大学などで非常勤講師を務める。専門は日本文学だが、アイドル論やファッション史など、幅広いテーマで授業や講演を行っている。著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会)、『可能性としてのリテラシー教育』『21世紀における語ることの倫理』(ともに共編著・ひつじ書房)、『光源氏になってはいけない』『謎の村上春樹』(プレジデント社)などがある。ツイッターアカウント @Teika27
(撮影=山本詩乃)
【関連記事】
なぜ「村上春樹になってはいけない」のか
村上春樹は「おたく」である
今年こそノーベル賞?最新「村上春樹」論<2>村上春樹は半沢直樹か?
心理診断「半沢直樹」でスカッとする人はなぜ二流か?
NHK朝の連ドラ「あまちゃん」はなぜヒットしたか