おそらくは「自分と子供が健康ならば恐れるものは何もない」という心境に達したからこそ、腹をくくって仕事に打ち込むことができたのだろう。やがて教え方と作家性に評価が集まり、州村さんは日本を代表するいけばな作家の1人といわれるようになっていく。
さて、こう書くと、威風あたりを払う女傑であるように誤解されるかもしれないが、素顔の州村さんは少女っぽさを残すチャーミングな人だ。落ち込んだときは、鏡に向かって笑顔をつくる。そして、小さくガッツポーズをして「がんばるんだ!」とささやくという。
「大切なのは笑顔です。自分に笑いかければ、気持ちも晴れ晴れしますから」
州村さんが教えてくれた。仕事のスランプといっても命を取られるわけはない。口角を上げて、それぞれの持ち場へ出かけようではないか。
(永井 浩、浮田輝雄、宇佐見利明=撮影)