雪洲と別れ、泥沼の裁判ざたに

さて、雪洲との将来はなくなったものの、嘘の嫌いな路子には珍しく周囲を欺き関係を続けた。

すでにメディアで喧伝されていたし、『ヨシワラ』の悪評の上にさらなるゴシップを重ねたくなかったためだ。そのうち、雪洲のプロダクション設立の話がなくなり、契約していた監督や俳優が裁判を起こす騒動に発展。路子は愛してもいない雪洲のために巨額の費用を負担することになる。

宝石や毛皮など財産と呼べるものはすべて売り払い、何もなくなった。これとてもとを辿ればマインルの財産である。本来であればマインルに伝えるべきところだが、路子は日本人の悪行として彼に知られることを恐れて言えなかった。そこまで日本人にこだわる感覚は現代人にはわからないが、明治の女の気骨なのかもしれない。