友情を選び、孤独を楽しむという至福

佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(Hanada新書)
佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(Hanada新書)

ただ定年後は、かつての友人であろうと新しく出会った人であろうと、人物鑑定を厳密に行うことだ。一度、会ってみて、「この人は自分と合わないなあ」と感じたら、もう二度と会わない。

ビジネスは卒業しているわけだから、それでいい。そうすれば、黄金の定年後を、より軽々と歩み続けることができるはずだ。

第二次世界大戦中にソ連のスパイだったリヒャルト・ゾルゲ、彼の諜報機関に参加していた評論家の尾崎秀実おざきほつみは、以下のように述べている。

「墓地を買うことなど断じて無用たるべきこと。もちろん、葬式、告別式など一切、不要のこと。真に私を知ってくれる友人たちとの記憶のなかに生を得れば、それで満足」

かくも友人は大切な存在だ。私は尾崎と思想を同じくする者ではないが、この言葉には感銘を受ける。

木のそばのベンチで休む男性
写真=iStock.com/yoshiurara
※写真はイメージです

一方、「孤独は人を賢者にする」という言葉もある。先述の通り、偉大な思想や哲学、あるいは文学や芸術のひらめきは、孤独な思索、たった一人の時間のなかから生まれた。

すると、気の置けない友人たちを数人得て、なるべく孤独な時間を持つことが、定年後の人たちの理想像なのかもしれない。

(初公開日:2025年11月2日)

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