私が会社を辞めた理由 転職体験者インタビューその3
M・Sさん(30歳)
○ 既婚、子どもなし
○ 転職経験2回
〈回り道をして見つけた天職。自分の希望ははっきり伝えなければいけないと身をもって知りました〉
大学を卒業して、公立小学校の先生になりました。先生は大変だ、ブラックだと言われるけれど、あこがれの仕事だったので合格したときはうれしかったですね。初任校では3年生の担任になり、はりきって社会人としてのスタートを切りました。
先生の仕事は想像以上に大変だった
でも、仕事は想像以上に大変でした。赴任した小学校は部活動が盛んで、私は若いからという理由で経験のないミニバスケット部の顧問に抜擢されました。本当は自分のクラスのことをやりたいのに、部活動に時間がとられてままなりません。それでもなんとかがんばるのですが、やればやるほど負担が増えるのです。
朝6時に家を出て遅くまで職場に残り、帰宅後はお風呂に入って寝るだけの生活。結婚の予定がありましたが、こんな暮らしでは子どもを持つこともできないと思っていました。
5年ほどそういう生活が続く中で、発作的に「辞めたい!」と思うたびに転職サイトを見ていました。そしてあるとき、未経験OKのIT企業の正社員の募集を見つけたのです。
好条件で未経験職種に転職したけれど……
転職するなら、本当は子どもにかかわる仕事をしたかった。けれど私が目にする求人は給料が安くて、踏み切れずにいました。たまたま見つけたその企業は、希望どおりの給料です。2カ月かけて研修で基礎を学び、3カ月目からSEとして働くという流れもきちんと説明してくれました。しかも基本は在宅ワーク。これはもう、やるしかない! と。
今どきは転職なんて珍しくありませんが、私にとっては一大決心でした。採用されたからには自分なりに努力して、いい仕事をしたいと思ったものです。会社はきちんと労働条件を守ってくれましたし、指導も丁寧でした。文句を言うようなことは何もありません。
それでも仕事をしながら、「この仕事は自分には向いていない」「やっぱり先生をやりたい」という気持ちがわいてくるのでした。結局1年ほどで退職し、もう一度試験を受けて小学校の先生に戻りました。担任を持たず、特別支援学級の担当でと条件を出して、それを認めてもらったのです。
条件だけで転職を決めると判断を誤ることもある
先生は私の天職なんだと思います。そのことは、一度現場を離れなければわかりませんでした。誠実に処遇してくれた転職先には申し訳なかったけれど、いい経験だったと思います。以前の私はつくづく八方美人だったと反省しています。仕事と家庭を両立したいなら、ちゃんと自分の意見を言わなきゃいけないんですよね。希望どおりの条件で天職に戻れて、今はとても充実しています。
転職に関して言えば、もう少し人の話を聞いてじっくり考えればよかった。転職サイトで条件だけを見て応募しましたが、自分一人の判断では間違えることがあると思います。だれにも相談しないで畑違いの職種に転職してしまい、結果的に会社にも迷惑をかけることになりました。「やりたいことが見つかったなら、それが一番だよ」と気持ちよく送り出してくれた前職のIT企業には、感謝しかありません。
22歳 大学卒業後、関東地方の公立小学校教員となる
28歳 IT系の企業に転職。フルリモートワーク
29歳 都内で再び公立小学校教員となる


