異常な高値が招いた「コメ離れ」

ところが、異常なコメの値段で、コメの消費が大きく減少している。

さらに、通常では輸入できないほどの高関税を乗り越えてカリフォルニア等から輸入が急増している。国産米の需要が減少し、来年9月の端境期に向けて想定以上にJA農協の在庫が積み上がる可能性がある。農水省は26年産の減反を30万トンほど強化すると言うが、来年9月米価は暴落するおそれがある。

そこで目を付けたのがコメ券である。

しかも本来コメ券の発給は自治体に任せているはずなのに、本来は期限無制限のコメ券に使用期限を設定すると農水省は言い出した。ひとり3000円のコメ券を交付し、7割引きの価格で5キロのコメを消費させれば、50万トンほどの特需を生み出すことができる。

つまりJA農協の在庫が、その分減少するということである。使用期限の設定は、在庫が積み上がった今、消費者に使わせようという意図からだろう。コメ券は、JA農協、なかでもJA山形県会長が会長を務めるJA全農の救済策なのである。

自治体からの反発の声が上がっている

しかし、農水省にとっても意外だったのは、コメ券の発給を丸投げされた自治体から反発を受けたことである。

大阪府交野市の山本景市長は、券を配ることでその分経費が掛かり、物価高騰対策には不適切だとして反発して、配布拒否を名言している

『コメ高騰の深層 JA農協の圧力に屈した減反の大罪』(宝島社新書)
『コメ高騰の深層 JA農協の圧力に屈した減反の大罪』(宝島社新書)

ほかにもかなりの自治体が、事務手続きの負担などから、コメ券を発給しない、代わりに現金給付や食品券を交付するなどの対応を決めている。本来価格政策というものは、全国一律に決めるべきものであって、自治体に任せるべきものではない。どの自治体に属するかによって、実際に負担する価格がまちまちになるからである。

コメの値段が上がったのなら、関税の削減による輸入の増加、減反の緩和・廃止による国産米の生産増加などによる価格引き下げで対応すべきである。それをJA農協の利益のために高い米価を維持して、コメ券の発給で消費者を騙そうとした。

今一人年間50キログラムを消費し、4万3000円のコメ代金を払っている消費者にとって、3000円のコメ券は焼け石に水としか言いようがない。

昨年コメが不足していないと言い張った農水省のさらなる不手際である。国民全体や消費者を考慮しないで、既得権益だけを考えて行ってきた農政のツケが来ている。それでも農水省は責任を取ろうとしない。被害を受けるのは国民・消費者である。

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