積み上がった在庫がJAの負担になっている
JA農協には米価を高く維持しなければならない事情がある。
今農家が受け取っている概算金は、あくまで仮渡金である。実際にJA農協が卸売業者に販売する価格(相対価格)が変動すれば、その価格は調整される。相対価格が高くなれば、農家は追加払いを受ける。このときは、問題ない。
しかし、低くなれば、JA農協は農家から価格低下分を取り戻すことになる。これは農家に不評となる。かつてこのような事態が起きたとき、農家は翌年からしばらくJA農協に出荷しなくなったことがあった。これを避けるためには、JA農協は相対価格を下げられない。これは、翌年産米が供給される来年秋まで続く。それまでコメの小売価格も下がらないということである。
JA農協は相対価格を維持するため、在庫調整を行う。しかし、JA農協も無制限に在庫を増やすわけにはいかない。在庫増には金利や倉庫料などの負担がかさむからだ。
農水省によるJA救済策
そこでJA農協を救済するのが、農水省である。
100万トンほどあった備蓄米を既に70万トン放出している。残った30万トンも4年古米と5年古米なので食用には向けられない。家畜のエサ用に処分する寸前である。つまり望ましい備蓄水準である100万トンを回復するという名目で、農水省が100万トンを市場から買い入れ隔離すれば、60万トン生産が増えたとしても市場での供給量を制限できる。
同時にJA農協は100万トン分の在庫を減少できる。つまり、農水省がJA農協の在庫を買い上げてくれると同様の効果を実現できる。これを織り込んで、JA農協は高い概算金を農家に払い、史上最高値の米価(相対価格)を実現しているのだ。

