「いつかは地球で一番高いエベレストに」

私の取材に対し、田部井さんはあきらめなかった理由をこう説明している。

「現状に反抗するとか、ウーマンリブとか、そういった考えはまったくありませんでした。有名になりたいという思いもなかった。好きな山々を登るなかで、いつかは地球で一番高い魅力のエベレストに登りたいと思っていた。ただただ純粋な気持ちから登りたいと願っていました」

都内の田部井さんの事務所を2度訪れて田部井さんを取材したのは、いまから15年ほど前のことだった。当時の取材ノートのメモを見ると、2011年1月14日と27日である。取材の内容は、産経新聞の朝刊にロングインタビュー記事として上、中、下と3日続けて連載した。いま、取材テープの録音を聞くと、あの懐かしい福島弁と笑い声が聞こえてくる。