「年金=貯蓄」と勘違いしていると…

このように公的年金には3つの不幸に備える機能がありますが、大事なことは、それぞれが別の年金制度ということではなく、厚生年金や国民年金に加入していれば、「老齢年金」、「障害年金」、そして「遺族年金」のいずれも受給することができるということです。

すなわち一番基本になるのは「老齢年金」ではありますが、何らかの不幸が起きた時にそれに合わせて支給されるということを知っておいてください。

さて、ここまでで「年金は保険である」ということがおわかりいただけたと思います。ところが世の中の多くの人はこのことに気付いておらず、「年金は貯蓄だ」と思っている人が多いのです。年金が貯蓄だと勘違いしているとどんな不都合が生じるでしょう。それは年金を「損得」で考えてしまうことです。

「INSURANCE」と書かれたジグソーパズルのピース
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「何歳から受け取るか」議論は意味がない

よく「年金は何歳から受け取れば得か?」みたいな記事が雑誌などに出ることがありますが、年金を損得で考えても意味はありません。年金は保険ですから一番大切なのは「損得」ではなくて「安心感」なのです。

保険に入るのは、何か悪いことが起きた場合でも金銭的な補償が得られるという安心感を得るためですよね。でも、もしその悪いことが起こらなければ払った保険料は無駄になります。しかし、それは必ずしも無駄とは言い切れません。万が一に備える安心感を買ったと思えば誰もが納得できるはずです。

年金も同じで「どんなに長生きしても死ぬまで年金が受け取れる」という安心感が大切なのです。仮に100歳まで生きれば65歳から支給される年金は35年間受け取ることができます。でももし60歳になる少し手前で死んでしまえば、年金は1円も受け取ることができませんから、それまでに40年近く払った保険料は無駄になり、損です(残された家族がいれば、遺族年金は支給されますが)。でも死んでしまえば損も得も関係ありません。

大切なのは損か得かではなくて、何歳まで長生きしても生活することができるという安心感にあるのです。