映画スターが生理用ナプキンと写真を撮る

前述した「パッドマン」は、国民に生理用ナプキンの使用を広める役割を果たした。インドでは生理用ナプキンが高価かつ羞恥心を催すアイテムになっており、普及率は2割ほどである。

タンポンとパッド
写真=iStock.com/ShotShare
※写真はイメージです

そのためインドの女性たちは生理になっても不衛生な布切れや紙切れなどで経血を処理するのが当たり前だった。それが病気を引き起こし、最悪の場合は死を招いた。また、女子児童生徒は初潮を迎えると生理中に通学しにくくなり、欠席が増えることで授業についていけなくなって、やがて退学に至るケースも多いことが分かった。

元々、インド人女性は月経により差別を受けてきた。現代ではさらに、月経についての正確な知識の欠如や生理用ナプキンの普及の遅れにより、教育の機会が失われ、女性の社会的地位向上が妨げられる悪循環に陥っている。

「パッドマン」は、安価な生理用ナプキンを広め、女性を生理のくびきと迷信から解放し、悪しき循環を断ち切るために立ち上がった一人の実在する男性の物語である。この映画の公開時には映画スターたちがこぞって生理用ナプキンとのツーショット写真をSNSにアップロードし、生理用ナプキンに染みついていた汚名の払拭に協力した。

性行為の前にコンドームを薬局で買うシーン

2020年代に目立つようになったのはコンドームに関する話題だ。インドではコンドームの普及率は1割未満とされている。生理用ナプキンと同様にコンドームの普及もインドが取り組んでいかなければならない喫緊の課題なのである。

高倉嘉男『インド映画はなぜ踊るのか』(作品社)
高倉嘉男『インド映画はなぜ踊るのか』(作品社)

コンドームが性病や望まぬ妊娠を防ぐことを訴えた「Helmet[ヘルメット)]もあったが、特に注目したいのが「Janhit Mein Jaari〔公共の利益のために告知)〕」と「Chhatriwali〔傘売り女〕」だ。

どちらも女性主人公がコンドームの製造や販売に関わるようになるという物語だ。当初は事情があって渋々その仕事をしていたが、コンドームが多くの女性の命や健康を守ることができると知って仕事に意義を見出し、やがて積極的にコンドームの普及に取り組むようになるという流れまで似ている。

これらの作品は、男性任せではなく女性主体でコンドームの使用を広め、夫婦間であっても子作り時を除きコンドームなしの性行為は拒絶すべきとのメッセージを発信した。

近年は、コンドームとは直接関係ない映画でも、性行為の前にコンドームを薬局で買うシーンが何の脈絡もなくわざわざ差し挟まれるなど、業界全体でコンドーム使用を当たり前のものにしようという観客への教育が行われているのをひしひしと感じる。

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