高齢出産を取り上げたコメディ映画
妊娠を題材とした一風変わった映画としては、大ヒットした「Badhaai Ho〔おめでとう〕」が好例だ。これは高齢出産を取り上げたコメディー映画である。20代の若者を持つ中年の母親がうっかり妊娠してしまい、家族や親戚から総スカンを食らって近所の笑いものになるという導入である。
いい年をした母親が妊娠するとインド社会ではどんな扱いを受けるのか、想像力とウィット豊かに再現されていた上に、最後は家族の絆が再確認されるという、インド映画の良さが詰まった名作であった。
妊娠関連の映画はヒット率が高く、不妊治療のミスを扱ったコメディー映画「Good Newwz〔良い知らせ〕」も大成功した。同じクリニックで同時期に体外受精による不妊治療を受けていた2組のカップルが、医者のミスによって、互い違いの精子によって受精させられて妊娠してしまうという、現実世界では有り得そうにない筋書きの映画である。
男性が妊婦に似た状態になる症候群
それでも、インドでは不妊の原因が女性側に一方的に押しつけられることが大半であることを考えると、不妊の原因は男女どちらにもありえること、そして体外受精による妊娠という解決法があることを周知する役割を果たしただけでも大きな貢献であった。
「Good Newwz」の続編「Bad Newz〔悪い知らせ〕」も作られた。やはり妊娠が主題であったが、今度は異父多胎妊娠という非常に特殊な妊娠が取り扱われていた。異父多胎妊娠とは異なる父親の精子によって同時に受精して生まれた双子のことを指す。
「Mister Mummy〔ミスター・ママ〕」では、男性が妊婦に似た状態になるクーヴァード症候群という非常にレアな症状が取り上げられていた。
EDやマスターベーションの正しい知識も
妊娠や出産は基本的に男女が関わる問題であるが、男性・女性それぞれが直面する性の問題もある。たとえば『結婚は大変』は勃起不全(ED)を扱った映画であったし、「OMG2〔ああ神様2〕」はマスターベーションについての誤解を正す内容の映画であった。
どちらも男性の尊厳に関わる微妙な話題に切り込んでおり、映画が男性観客に支えられているインドの現状を考えると、リスクのある企画だったと思われる。一昔前のインド映画では到底考えられない挑戦だったが、見事にヒットした。
作品の質が高かったことに加えて、観客が成熟してきたことも示しているのではなかろうか。女性にとっては生理の問題が大きい。

