ランチを食べていたレストランで携帯電話の電池が切れそうなことに気づいた。辺りを見回すと、運よく洗面所の壁にコンセントを発見。こっそり充電した場合、電気泥棒になるのか。

結論から言うと、これは刑法上、明らかに窃盗に当たる。刑法235条には、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とある。

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“ちゃっかり借用”は罪になる恐れあり

「いやいや誰かの持ち物じゃないし、少しくらいいいじゃないか」と開き直りたくなるかもしれない。窃盗と言えば、普通は形のある物を盗む行為を思い浮かべるからだ。刑法も基本的にはそういうスタンスだ。目に見えないものや持ち運ぶことができないもの、一定の管理下に置けない性質のものは、誰かの持ち物と言えないし、そもそも盗られたと証明のしようがない。だから「わが家の雰囲気が盗まれた」とか「花の香りを盗られた」と騒ぐことはできない。窃盗の対象になる「財物」とは、基本的に形あるもの(有体物)で、きちんと管理ができ(管理可能性)、持ち運ぶことができる(可動性)ものだ。

電気は形がないので(無体物)、一般的な「物」というより、花の香りに近い気もするが、管理は可能だ。かつて無体物である電気は財物ではないとする少数説もあったが、今では刑法245条に「この章の罪(窃盗及び強盗の罪)については、電気は、財物とみなす」と明記されている。つまり電気の無断使用は、グレーどころか真っ黒けの窃盗なのだ。