「瞬足」ブランドは、年間220~230もの商品アイテムを開発・販売する。靴底のソール部分は、用途によって左右非対称、左右対称にするなど工夫を凝らす。足を正しく育成するため、中底のインソールにも注力。パーツ写真は、それぞれ別個の商品から。

03年の発売以来、「瞬足」は販売数を倍々に伸ばして、いまでは年間600万足を超える。10年経っても勢いが衰えないのは、津端氏ら開発チームが子供のいる現場に通い、そこで見たものを商品開発に活かしてきたからだろう。たとえば09年発売の「瞬足スリム」も、運動会で時折見かける光景から生まれた。

「走っている途中に靴が脱げて転ぶ子が意外に多くて。よく見ると踵(かかと)の部分がブカブカで、足が抜けやすくなっている。これではまともに走ることができません。そこで足幅の狭い子に合わせた極狭の1Eサイズ新商品を展開することにしました」

新たに投入されたのは「瞬足スリム」だけではない。スピンやステップの動きに対応した「瞬足ダンス」、ボールを蹴るときに軸足となる左足のグリップ力を高めた「for SOCCER」など、さまざまなバージョンを展開。ユニークな企画力を武器にファンのすそ野を広げてきた。

ただし、ヒットの理由をアイデアの斬新さだけに求めるのは間違いだ。津端氏は、「瞬足」が愛され続ける理由を、次のように分析する。

「お母さんが重視するのは、運動靴としての仕掛けよりも、“軽量”と“耐久性”という通学履きとしての基本性能です。軽さと耐久性を両立するのは難しいのですが、私たちは『瞬足』以前から2つを両立させる設計思想でやってきました。それが積み重なって、いま実を結んだのではないでしょうか」

つねにユーザーの側に立って開発を続けてきた同社がこの8月、満を持して発売するのが「そくいく(足育)」シリーズだ。

「いま子供の足のトラブルが増えています。土ふまずが未発達で“扁平(へんぺい)足”だったり、指が地面に着かない“浮き指”になったり。また、足に合わない靴を履いて“外反母趾(ぼし)”になる子も少なくありません。私たちは走りたくなる靴を作ることをずっと考えてきましたが、その前にしっかりとした足を育てることも大事。そこで正しい歩行が身につく靴を開発するに至りました」

「そくいく」には、子供の足の育成を促す機能が満載。インソールは踵を包んでホールドするとともに、土ふまずを作るアーチの形成をサポート。屈曲溝がついたソールには独自構造のプレートが埋め込まれ、“足なり歩行”しやすくなっている。また靴の中で指を動かすことができるように、サイズに合わせて指の側角度に違いをつけた設計になっている。

とはいえ、靴まかせではいけない。子供の足を正しく育成するには、お母さんの意識改革も必要だ。最後に津端氏はこうアドバイスしてくれた。

「すぐ買い替えるのはもったいないからと、大きめの靴を買って履かせるお母さんが多いようです。しかしサイズの合わない靴は足のトラブルを引き起こしやすく、思い切り走れなくなったり、将来おしゃれな靴を履けなくなるおそれもあります。子供には正しいサイズの靴を履かせてやってほしいですね」

(遠藤素子=撮影)
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