最初の夫が教えてくれたこと
その相手は因幡国(鳥取県東部)の士族、前田家の子息で為二といい、実際、セツの家(稲垣家)に養嗣子として迎えられた。「ばけばけ」の山根銀次郎(寛一郎)のモデルである。為二は教養人で、浄瑠璃を愛好し、近松門左衛門の作品を愛読していたという。物語好きのセツとは話もよく合ったようだ。
そして、のちに小泉八雲がセツから聞いて、『知られぬ日本の面影』に載せた怪談『鳥取のふとんの話』も、もとはといえば、鳥取出身の為二からセツが聞いたものだった。それはざっと以下のような話だった。
小さな宿屋に旅の商人が泊まったが、深夜にふとんの中から「あにさん寒かろう」「お前こそ寒かろう」という子どもの声が聞こえる。商人からそう訴えられても、宿屋の主人は相手にしなかったが、泊まる客がみな同じことをいい、ついには主人もその声を聞いた。そこで、ふとんを買った古道具屋に事情を聞くと――。
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