最初の夫が教えてくれたこと

その相手は因幡国(鳥取県東部)の士族、前田家の子息で為二といい、実際、セツの家(稲垣家)に養嗣子として迎えられた。「ばけばけ」の山根銀次郎(寛一郎)のモデルである。為二は教養人で、浄瑠璃を愛好し、近松門左衛門の作品を愛読していたという。物語好きのセツとは話もよく合ったようだ。

そして、のちに小泉八雲がセツから聞いて、『知られぬ日本の面影』に載せた怪談『鳥取のふとんの話』も、もとはといえば、鳥取出身の為二からセツが聞いたものだった。それはざっと以下のような話だった。