名作マンガのように「石」を売るはどうか

さて、80歳の筆者でも可能な商いを考えているうちに、筆者の脳裏に浮かんだのが、つげ義春氏の名作『無能の人』でした。漫画家として行きづまった主人公が元手ゼロの商売として手掛けたのが、河原で拾い集めた石の販売でした。主人公は多摩川の河川敷に自作の掘っ建て小屋を作り、「石」と書いた看板を掲げて客を待ち続けます。もちろん作中で石が売れることはありませんし、主人公への救済らしきものはありません。

確かに河原で石を集めて、並べて「売ります」と看板を掲げていれば、物好きは話しかけてくるかもしれません(もしそのような場面を発見したら、筆者は間違いなく店を覗きます)。しかし、そこから商いを発生させるとなると、かなり厳しいものがあります。というのも、私たちはただそのへんにある「石」を見ても、せいぜい「川に向かって投げよう」くらいしか思いません。そのような動機しか生まない「石」をぽんと置いて、仮に人の集まりを生み出すことができても、商いを発生させることはかなり困難なのです。

段ボールに詰められた様々な石
写真=iStock.com/Stephen Barnes
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だとすれば商いの基準点として設置するモノを、石ではなく「人が集まり、何かしたくなる特性を持つモノ」に変えてしまえば、「無能な私」でも「楽しく、気楽に、ほどよく稼ぎながら老後を送る」道が開かれるのではないでしょうか。