「痩せているから大丈夫」が糖尿病への大きな落し穴
「先生、私、全然太っていないんです。だから糖尿病とは無縁ですよね?」
このセリフ、臨床の現場で、これまで幾度も聞いてきました。ですが、その認識こそが、実は大きな落とし穴なのです。
糖尿病というと、「肥満の人がなる病気」というイメージが根強くあります。たしかに、過体重や肥満は糖尿病のリスク要因のひとつではあります。しかし、現実には、見た目がスリムであっても糖尿病と診断される方は少なくありません。
特に注意が必要なのは、手足は細いのに下腹だけがぽっこり出ているような体形の方です。この状態は内臓脂肪が蓄積している可能性が高く、糖尿病を含む生活習慣病のリスクも高くなります。体全体がふっくらしている皮下脂肪型肥満と比較すると、この内臓脂肪型肥満のほうが、インスリンの働きを悪くする「インスリン抵抗性」を引き起こしやすく、糖代謝の異常につながりやすいとされているのです。
特に日本人は、世界的に見ても痩せ型の糖尿病患者が多いと言われています。つまり、体重や見た目だけで安心していると、知らぬ間に病気が進行する危険があるということです。
糖尿病の本質は、体の中で血糖値をうまくコントロールできなくなる「血糖値の異常」にあります。なかでも、血糖値の乱高下が、体に大きなストレスを与える原因になります。疲れがとれない、集中力が続かない、甘いものをやめられない、いつもイライラする……そんな症状に心当たりはありませんか?
それらはすべて、血糖値の乱高下が引き起こしている可能性があります。これを、私は「糖質疲労」と呼んでいます。
私がこのことを強く意識し始めたきっかけは、あるタクシードライバーさんから聞いた経験談でした。彼は「仕事中に食事を摂ると、どうしようもなく眠く、だるくなる」と言うのです。
どんな食事なのか聞くと、多くは牛丼やラーメンなど、炭水化物が多く、短時間で食べられるものでした。つまり、炭水化物(糖質)を短時間で摂取していたわけです。これが、我慢できないほどの眠気とだるさを誘っていた。要するに「糖質疲労」が起こっていたのです。
眠気とだるさをもたらす「糖質疲労」ですが、その先にはさらなる問題が潜んでいます。食事を摂った後は誰でも血糖値は上がり、少し遅れてインスリンが分泌され、血糖値が下がります。その上がり幅が大きいのが「食後高血糖」です。すると、インスリンが大量に分泌され、血糖値の上昇に急ブレーキがかかり、ジェットコースターのように血糖値が下がる。この血糖値の乱高下がいわゆる「血糖値スパイク」と呼ばれるものです。
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