業界や会社により濃淡はあるが、公務員ではない限り、徐々に実績給の比率が増えている。日本の企業社会は今後3年で、ますます変動相場制へ近づいていく。おそらく10年後には、「正社員」という言葉すらなくなると思う。

それまでの間に、企業社会には次のような慣行ができあがるだろう。

職種と職位ごとに「年収2000万円」「年収1500万円」といった値段がつけられ、その条件で会社と個人とが折り合えば契約に至る。合意できなければ、それぞれが別の相手と契約を結ぶ。個々のサラリーマンが市場価格によって値付けされるようになるのである。

その場合、雇用契約は「終身」ではなく1年単位。したがって給料の後払いの性格を持つ退職金制度は無用となり、大部分の会社はこれを廃止するだろう。別の見方をすれば、「正規雇用」と「非正規雇用」の区別が消え、フラットな制度ができあがるのだ。

ひどく馴染みのない世界のように思われるかもしれないが、取締役など会社役員はすでに同様の立場にある。かつて企業の役員任期は2年が標準だったが、いまは会社法が定める最短期間の1年が主流になっている。当社の役員任期も1年だ。私自身を含め、当社の役員は1年契約を繰り返しながら働いているのだ。

もちろん給料の額や社会的な地位が高いという意味では恵まれている。だが、退職金がなく1年契約という条件を見れば、いまの会社役員はパートタイム従業員と変わらない。今後はそれが一般の従業員にも広がっていくのである。