浦野平也●アイティメディア総務人事部担当部長。1974年生まれ。早稲田大学卒業後、ソフトバンク入社。広報部、人事部を経てソフトバンクBBの設立、人事部門の設立に参画。アイティメディアに移籍し、2006年より現職。

「2011年採用から、就職サイトのリクナビをやめてツイッターやフェイスブックに思い切って替えたのです。学生のエントリー数は6分の1に減りましたが、一次面接の通過者はHPなどから応募してくる学生と比べて、ツイッター経由の学生が多い。内定を出した学生の質も高く、正直驚きました。しかも採用コストは以前は500万円かかっていたのが19万円で済んだのです」

こう語るのはアイティメディアの浦野平也総務人事部担当部長だ。同社はIT業界の情報発信事業を手がけるマザーズ上場企業である。例年10人前後の新卒を採用しているが、11年度採用はツイッター、12年度以降はフェイスブックを駆使した採用活動を実施している。ソーシャルネットワークサービス(SNS)での採用活動に踏み切る契機となったのは求める人材像の変化だ。

「ウェブのメディアからウェブビジネスに事業戦略がシフトする中で、単にメディアをやりたい人ではなく、ウェブビジネスをつくりたいという人にターゲットを絞り込んだのです。その場合、リクナビを使って学生を大量に集めるやり方でいいのか、求める人材にアプローチする方法はほかにないのかと考え、行き着いたのがSNSだったのです」(浦野部長) 

表を拡大
ソーシャルリクルーティング元年

それでも当初は求人サイトを利用しないで本当に学生が集まるのかと不安だらけだったという。プライベートで使うツイッターにいきなり「採用担当です」とフォローしても気持ち悪がられるだけだと思い、就活生に役立つ情報を数多くツイートした。一方で就活中と思われるユーザーのアカウントを蓄積し、毎日検索しながら学生の悩みに対する丁寧なフォローを心懸けた。

「この人には情報を提供できるなと思ったら『はじめまして採用担当でツイッターをしています。もし迷惑だったらブロックしてください。もしよろしければフォローしてください』と声をかけます。地道に繰り返し、3カ月ぐらいで100人がフォローしてくれた。その後、この担当者は就活生の役に立とうとしてやっていると思ってくれるようになり、フォロワーが700人、800人と増えていきました」(浦野部長)

もちろん、それでエントリーしてもらえる保証はない。蓋を開けてみるとエントリー数約1000人のうちツイッター経由による応募が250人と4分の1。しかし、数次の面接後の内定者はツイッター経由が8割を占めた。翌年はフェイスブックに切り替えたが内定者の全員がフェイスブック経由だった。ツイッターやフェイスブック利用者のほうが優秀な人材が多かったのだ。

「しかも、採用を見送った学生や、他企業に就職した学生ともSNSでつながっていられます。そうした人材に目をかけておき、中途採用で声をかけることも可能。新卒一括採用という概念がSNSによって崩れるときがくるかもしれません」

※すべて雑誌掲載当

(小林雄一、的野弘路=撮影)