新型コロナウイルスの対応をめぐり、各国の差が顕著になってきた。ここにきて評価を高めているのが台湾だ。台湾当局は日本よりほぼ1カ月先行して、マスク転売禁止や入国制限、開校延期などさまざまな対策を打ち出してきた。この「強い政府、機能する行政」の背景には何があるのか――。
ビルや店舗の入り口での検温をはじめとする政府の防疫対策に、市民も協力している。(台北市内のデパートにて、3月7日)
写真=AP/アフロ
ビルや店舗の入り口での検温をはじめとする政府の防疫対策に、市民も協力している。(台北市内のデパートにて、3月7日)

「日常風景」の一部になった防疫体制

中国・韓国からの入国制限の強化、全国の学校への休校要請など、ようやく新型コロナウイルス感染症への本格的なアクションを取り始めた日本政府。一方、台湾の政府当局は日本よりほぼ1カ月先行して、数々の強力な防疫対策を実施してきた。

日々の生活の中で、市民が不便や不自由を強いられる場面も少なくない。筆者の台北事務所のある建物を含め、ビルやレストランの入口で警備員に体温チェックされるのは当たり前だ。工事現場でも現場に立ち入る作業員全員に、検温と手指のアルコール消毒を励行させている。企業や工場などでは、入り口の検温で37.5度以上あればその場で出社禁止になるし、病院でもマスクを着用しない人は建物への立ち入りを拒まれる。

だが、2月28日に台湾で行われた民意調査では、国民の77%が感染拡大に不安を覚えると答えながら、82%が蔡英文政権の防疫政策には満足していると答えている。その理由はどこにあるのだろうか。

早々に全学校の始業を延期

まずは日本でも行われている、学校の休校措置を見てみよう。日本政府が全国の小中学校および高等学校に、臨時休校を要請したのは2月27日。国民から見れば突然の発表だった。

一方の台湾では、開校の9日前の2月2日に中央感染症指揮センター(中央流行疫情指揮中心)が、同11日に予定されていた春節休み開けの学校始業日を2週間延期すると発表した。発表の数日前から、日本の国会にあたる立法院では始業延期に伴うトラブルについて多くの議論が行われ、その内容は一般に公開されていた。

同日の発表では、始業延期期間中の「防疫世話休暇(防疫照顧休暇)」を認めることも加えられていた。対象は12歳までの子どもの父母、養父母、祖父祖母など、通常子供の世話をしている人だ。ただし、賃金の補償については明言されなかった。台湾ではよくある「先決め・後補償」で、まず大事な方向性を決めて即時対応してから、補償などについてはゆっくり決めるという方法論だ。台湾人も慣れたもので、ガタガタ騒がない。