台湾で新型コロナウイルス対策の先頭に立つのが、中央伝染病指揮センターの指揮官を務める陳時中・衛生福利部長(日本の厚生労働大臣に相当)だ。台湾初の死亡例が出た際の記者会見をはじめ、批判を受けてもおかしくない厳しい仕事の連続だが、台湾市民はその仕事ぶりを大絶賛。なぜか——。
到着予定便のキャンセル表示が並ぶ台北・桃園国際空港のディスプレー(2020年2月4日)。台湾当局は2月7日から、2週間以内に中国を訪れた人の入国を禁止する措置をとった。
写真=EPA/時事通信フォト
到着予定便のキャンセル表示が並ぶ台北・桃園国際空港のディスプレー(2020年2月4日)。台湾当局は2月7日から、2週間以内に中国を訪れた人の入国を禁止する措置をとった。

台湾でもついに「国内感染」で死者が

2月15日、ついに台湾初の新型コロナウイルスによる犠牲者が出てしまった。死亡したのは60代の男性で、台湾中部在住のタクシー運転手。B型肝炎と糖尿病の病歴があった。出国歴がなく、既知の感染者との濃厚接触も確認されていなかったため、台湾国内でも不安が広がった。

翌16日、中央伝染病指揮センター(中央流行疫情指揮中心)の指揮官を務める陳時中(Chen Shih-chung)衛生福利部長(日本の厚生労働大臣に相当)は、当該の案件の詳細な報告を行った。男性は1月27日からき込みはじめ、2月3日に病院で肺炎と診断され、入院。外部にウイルス等が漏れない陰圧環境で、集中治療を開始した。2月15日夜、肺炎に合併して起こった敗血症で死亡。家族の同意をもって検体検査をした結果、新型コロナウイルス陽性と判明した(台湾では19例目)。

調査の内容を、大臣自ら国民に詳しく発表

犠牲者の同居家族2人、非同居家族10人、医療機関接触者60人、集中治療室での接触者7人について、台湾当局は全員に検査を実施。16日の時点で医療関係者60人は全員陰性、同居家族のうち1人が陽性と判定され、残りの人々についても検査を継続中であるとも発表された。

陳部長は、入院前の接触者をさらに追跡中で、感染の可能性のある人物を探し出すよう努力すると表明。さらに、海外渡航歴のない人の感染という事態を受け、国内の管理体制と安全対策の強化も発表している。

前回の記事(「『日本とは大違い』台湾の新型コロナ対応が爆速である理由」)で述べたように、迅速かつ厳重な水際対策を実施していた台湾でも、国内内感染の発生は防ぎきれなかった。武漢で「原因不明の肺炎」が集団発生したという昨年12月31日の第一報以降、水際対策らしい対策をほとんど行わず、多くの警戒対象地域から観光客などを受け入れてきた日本で、今報告されている感染はこれからどこまで拡大するのだろうか。