チャーター機帰還者への厳格な検疫
とはいえ、日本政府が計5回のチャーター機で、合計799人の邦人を武漢から救出したことには素直に称賛を送りたい。1月23日に武漢が封鎖されたのを受け、日本政府は1月26日から中国政府と協議を開始。中国側の要望にできる限り応える形で、その3日後には全日空のチャーター機を武漢に送ることに成功している。
台湾政府も1月27日には武漢へのチャーター機派遣を中国政府に打診するとともに、台湾人の保護と帰国を要請した。だが中国側は回答を保留。1月30日、蔡英文総統は総統府で談話を発表し、「国民を迎えに行きたい」「武漢地区に滞在している台湾人が適切な援助を得られることを願い、中国側への働きかけを継続する」と訴えた。
打診から約1週間が過ぎた2月3日夜、ようやく武漢から247人の台湾人を乗せたチャーター機が、台北の桃園国際空港に到着した。当初は台湾側から飛行機を送る予定だったが、中国側がこれを拒否。中国東方航空の機体が使用された。
到着したチャーター機は旅客ターミナルではなく、空港の格納庫に誘導された。格納庫内には救急隊や警察、検疫官、輸送バス隊が完全防備態勢で待機。まず検疫官が機内に立ち入って状況を確認し、帰台した人々に今後の流れを説明した。
その後乗客は飛行機を降り、格納庫内で青い服を着用(識別用なのか防護用なのかは不明)。問診や検温、荷物チェックなどの後、チャーターバスや救急車で、3カ所の隔離施設に搬送された。このときのチャーターバスの運転手は防護服を着用するなど、十分に安全が考慮されていた。日本のチャーター便第1便の帰国者を運んだバスの運転手が、マスク1枚だけの軽装だったのとは対照的だ。
受け入れ不安の声にも丁寧に説明
検疫所や隔離施設周辺の住民からは、帰台隔離者の受け入れに不安の声があがったが、衛生福利部の陳部長は「検疫所や隔離施設は民家から距離が非常に離れている。加えて、滞在者に対して確実な隔離を実施する」と呼び掛け、理解を求めた。隔離施設に滞在する人々には1人1室が与えられた。民間ホテルに相部屋で帰国者を押し込んだ日本とは、比べるのもおこがましい。
隔離された人々には、14日間にわたって検疫観察が行われた。期間中の検査では245人が、2回連続「陰性」と判定され、2月18日、感染者1人と別の症状で入院中の4人を除く242人が、隔離を解除されて帰宅を許された。彼らは帰宅後も引き続き14日間の自主健康管理(人の多い場所に出入りしない/外出時はマスク着用/体に異常が出たときはすぐ報告、など)を求められ、地元の衛生局が訪問して健康状況を確認するという。念には念を入れた対応であり、疫病危機管理への認識の違いが日台間で大きく違うことがわかる。