10年後の日本はどんな国になっているか。「ヨーロッパ最高の知性」と称されるジャック・アタリ氏は、産官学の各界が連携する「日本アカデメイア」主催のシンポジウム「東京会議」出席のために来日し、「日本の今後は『女性の地位』がカギを握る」と話した。「知の巨人」の提言をダイジェストでお届けする――。(第3回/全5回)
写真提供=日本アカデメイア
「日本アカデメイア」が東京都内で開催したシンポジウム「東京会議」

世界的な課題を解決する6つの方法とは

――「東京会議」開催に向けてアタリ氏は、世界の諸問題解決に向けた具体的方策を提言した。1つは既存する国際協定の維持。そしてもう1つは新たな機構の構築だ。

1.既存の国際協定を維持する。すなわち、気候に関してはパリ協定、貿易に関しては世界貿易機関(WTO)、労働に関しては国際労働機関(ILO)、国際紛争に関しては国連総会および安全保障理事会、核軍縮に関しては既存の条約を保持する。
2.新たな問題に対処するための新たなフォーラムまたは機構を構築する。
a.経済協力開発機構(OECD)において脱税防止のためのプラットフォームを構築しGAFAへの国際課税を体系化する。
b.人工知能開発(特に兵器に関わるもの)を制限するための憲章を導入する。
c.遺伝子操作の開発を制限するための憲章を導入する。
d.CO2排出への国際課税を導入する。
e.あらゆる人(特にまだ国民登録のない10億人の人々)を対象として「世界市民パスポート」を交付する。
f.あらゆる場所で、児童の権利、女性の権利、あらゆるマイノリティーの権利を保護する。

既存の国際機関は、生きながらえなければなりません。ただし現実に合わせて調整することも可能だと思います。例えばオープンに議論して国連安保理の構成を変える。安保理は、いつまでも今のような構成ではいられないと思います。インド、アフリカ、ラテンアメリカ諸国が安保理の常任理事国に入っていないことは、正当性に欠けます。制度を強化しなければいけません。

今年、大阪で20カ国・地域(G20)サミットが開催されました。G20も常設の事務局をつくることが賢明です。G20を1つの場として、何が決定されたか、制度的な記憶を持ち、フォローアップをする。議長国の変更はあってもいいのですが、事務局を持つことが、G20を生かす1つのやり方だと思います。GAFAや炭素への課税については、今はただ議論されているだけです。