お隣の国、韓国は長らく不況が続く。学歴社会で勝ち抜いてもなかなか、理想の職にありつけない。一方、日本は空前の人手不足。そんな職にあぶれた韓国エリートを日本の大企業が青田買いしている。日韓両国の現状を取材した――。

世界で最も高学歴な貧困者が多い国・韓国

1997年のIMF通貨危機を境に韓国経済が斜陽となり、若年層の失業問題は長年韓国社会を悩ませてきた。

少なくとも2000年から現在に至っても改善の兆しはなく、17年2月には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録。一方で、激しい受験戦争でも知られる韓国は、韓国統計庁によると、05年の82.1%をピークに大学進学率が70%台で推移し、高学歴者が国民の8割近くを占める。

ただ、大企業と中小企業の賃金格差が激しく、ほんの数%に満たない大企業に入ることができなければ年収200万~300万円台の中小企業で働くか、アルバイトに甘んじるしか道がない。

アルバイトもムン・ジェイン政権が最低賃金を18年の7530ウォン(約742円)から19年は8350ウォン(約823円)に大幅に引き上げ、競争率が激化。ますます職にあぶれる若者が増えたとされる。

まさに世界一、高学歴貧困者が多いといえる韓国の実情に迫った。

就職活動で鼻を美容整形したが、いまだ“成果”出ず

地方都市出身でソウルの小売会社に勤めるソ・テギョンさん(仮名・30歳)は、韓国では中の上程度の大学を卒業するも就活は全敗。高卒枠で大手スーパーマーケットにようやく拾われ、月に120万ウォン(約11万8300円)を得るのがやっとだった。今の会社に入れたのは、政府が若年層雇用促進のため打ち出した「青年追加雇用奨励金」制度を受けて入社した。満15~34歳までの青年を正社員として雇用した企業に対し、政府が企業規模に応じて採用者1人につき最大2000万ウォン(約197万2000円)負担する制度だ。支給されるには3年間在職する必要があり、企業側にとっても低賃金で労働力を繋ぎ留めておけるため好都合である。

現在の月収は、交通費込みで手取り140万ウォン(約13万8000円)。家賃は弟と折半しているが、どんなに節約してもほとんど残らない。あと数カ月で支給される奨励金が当面の頼みの綱だ。

「それでも、この会社にいる限り昇給は望めません。僕は弟と一緒だからソウルに暮らせていますが、単身で上京している人たちは悲惨。地方にたいした仕事がないから否応なくそうなりますが、職を探すまでは極貧生活。一日にカップラーメン一食だけという人もいます」