「中今(なかいま)」を貫けば、ひとりの時間もキラキラ輝く

長年、東京大学附属病院で救急医療と集中治療、ふたつの部署の部長を務めるなど医療の現場で命と向き合ってきた矢作直樹さん。約3年前に退任し、現在は、東京大学名誉教授として執筆や講演などの活動を精力的にしている。

医学博士・東京大学名誉教授 矢作直樹氏

多くの著作には医師として生と死を見つめ続けたからこそ語れる矢作さんの“哲学”がちりばめられている。とりわけ矢作さんが大事にしているのが「中今(なかいま)」という生き方だ。

「『中今』とは、神道から継承されている考え方です。意識を過去や未来に合わせるのではなく、今という時間を大切にして、今この瞬間を無心に生きる、楽しむ、という感覚。私も親からよく言われて育ちました。例えば、ひとりでいる状態を“寂しい”という心のあり方ではなく、“とても自由な状態で、ありがたいもの”と受け止めて、あるがままに、ありのままに今を楽しむことが『中今』につながるのです」

だが、ひとり=孤独というイメージがあり、その状態になりたくないと感じる人も少なくないだろう。どうすれば、「中今」の状態になれるのか。

「単純に童心、無心(夢中)になればいいのです。今の自分に集中するのです。寝付きの悪い小さな子がお母さんに添い寝をしてもらって、『羊が1匹、羊が2匹……』と言われているうちに次第にウトウトすることがあります。それまでは感情が波立っていたけれど、ほかのことを忘れて羊の世界に意識を合わせると、すーっと楽に眠りにつける。例えていえば、そんな感覚です。

無心になる方法は何でもよいのです。瞑想してもいいし座禅を組んでもいいし、ヨガをしてもいい。絵を描くのが好き、音楽が好き、武道をするのが好きなら、それをやるうちにその世界に没入できるのではないでしょうか」