日本大学の運動部は、全国からスポーツ推薦で優秀な選手を集めたエリート集団だ。その運動部の全キャプテンが、およそ2カ月に一度、東京・市ヶ谷の日大本部に招集される。彼らを待ち受けているのは、「お前たち、そんな成績で満足してるのか!」という“お偉方”の恫喝だという。一般人が知らない「日大体育会」の内幕とは――。
日大の運動部には、同大学の一般学生も知らない独特の「文化」があるという――。OBのA氏が卒業記念にもらったというタオル(写真提供=A氏)

全部活のキャプテンを恫喝する「偉い人たち」

「ふた月に一回ぐらい、全部活のキャプテンと総務担当の学生が市ヶ谷の日本大学本部に集まって、偉い人たちの前で活動報告をするんです」と、数年前に卒業した日大運動部OBのA氏は言う。「偉い人たち」とは、日本大学の運動部全体を統括する保健体育審議会(保体審)の、事務局幹部をさす。

「『今回はこういう大会に出て、こういう成績でした』と学生が報告すると、『お前たち、そんな成績で満足してるのか!』と、高圧的に怒鳴られるんです。『次回はがんばります!』というと、『毎回それ聞いてるんだよ!』とか。口答えなんかできる雰囲気ではなかったですね。一方で、相撲部はなぜか優しくされていて、『自分たちは何を見せられているんだろう』と戸惑ったのを覚えています」

上下関係の厳しさや規律の重視は、いわゆる「体育会」の世界では珍しくはない。高校1年生のころからインターハイに出場するほどスポーツに打ち込んできたA氏も、そういう文化にはある程度慣れていた。

「それでも、日大の上下関係の厳しさは高校時代から噂に聞こえていて、実際に進学してからも実感しました。厳しいというだけでなく、考え方や組織の体質がすごく古い。昔話として聞いても驚くようなことが、この時代になっても普通に行われている。今の若者にとっては、ほとんど異世界だと思います」

監督の指示で選手が悪質なタックルを強いられたという、先日の日大アメリカンフットボール部の事件について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「もしいま言われていることが本当だとするなら、日大らしいなと思います。事件そのものも、その後の対応についても」