“あの事件”の対応を誤ったせいで、日本を代表する私学・日本大学が窮地に立たされている。橋下徹氏によれば、その原因は危機管理の拙さだ。不祥事が起きたときに組織はどのような記者会見を開けばいいか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(5月29日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

ダメダメだった釈明会見! あの司会者はどう仕切ればよかったか

日本中で大騒ぎになった日本大学アメリカンフットボール部のラフ・プレー事件。日本大学が何かアクションを起こせば起こすほど、騒ぎは大きくなる。危機管理対応としては絶対にやってはいけないことのオンパレード。これって日本大学危機管理学部の教材にするためにわざとやっているのではないかと思うくらい、ほんとダメダメな対応だった。

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日本大学の組織として、何の方針も決めないまま、後手後手で会見を開くありさま。付属の中学校や高校を含めた学校法人としての理事会や、大学単体の最高意思決定機関において、本件問題を議論したことはないらしい。騒ぎになってから、もう1カ月近くも経っているというのに。

加害生徒が顔出しの会見を立派に開き、当初の日大アメフト部の主張を真っ向から否定し、本件ラフ・プレーは日大アメフト部の内田正人前監督や井上奨(つとむ)前コーチが指示したものである旨をしっかりと主張したことに慌てて、内田前監督と井上前コーチが会見を開いた。この会見は何の準備もしていないことが明らかだったね。弁護士も同席させていなかったし。

認めるべきところは何か、謝罪すべきところは何か、そして認識の違いとして主張すべきところは何か、についての事前の整理が何もなされておらず、自分たちの責任を小さく見せようという姿勢がアリアリの会見だった。

何と言っても、そのときの司会者がイカしていたね。極めて横柄な態度。この会見を国民が見ているかどうかは関係ない! 日本大学のブランド力は落ちない! と、まあ日本大学のダメージを回復するどころか、日本大学のイメージをこれでもかと破壊していた。

この司会者は、日本大学の広報担当の職員らしいんだけど、元々共同通信の記者をやり、論説委員などを務めた出世頭だった模様。だから記者会見に来ていた記者に対して先輩風を吹かせたんだろう。

確かに、記者会見の記者の質問も酷い。同じような質問を各記者が繰り返す。同じテレビ局が、番組ごとに質問をしていた。番組のスタッフや記者などが番組名を名乗って質問し、それに対して日大側が答えるシーンを撮るためだ。つまり自分たちの番組に対しての回答という画が欲しいだけ。

そういう記者の質問に対して、あの司会者は記者としての先輩風を吹かせたのだろうが、これは完全に失敗だった。だって日大側は、自らの不祥事を釈明する会見なんだから、偉そうにできる立場ではない。偉そうにしようものなら、視聴者の反感はたちまちピークに達してしまう。

日大側は、ここはグッとこらえてダメージ回復に努めなければならなかった。各記者が同じ質問を繰り返してきたときには、「恐れ入りますが、先ほど同様の質問にお答え致しました。本会見の時間には限りがございますので、次のご質問者様にお譲り下さい」くらいのかわし方をすればよかったんだ。