世界的に安定的な経済成長が続いている。だが、そういうときこそ、冷静になるべきだ。いまの景気を牽引している要素に目を向ければ、来年の経済予測には違った姿が見えてくる。気鋭のエコノミストが楽観論に潜む「落とし穴」を検証する――。

世界経済を支える3つの短期的好材料

世界的に経済環境が改善し続けている。2017年前半の日本のGDP成長率は1.5%と、近年まれに見る高水準を記録した。日本に限らず諸外国を見渡しても、同様に順調な景気拡大が続いている。例えば米国と欧州(ユーロ圏)はともに今年前半2.1%の成長を記録し、緩やかながら加速傾向が見られる。また、一昨年から昨年にかけて「チャイナ・ショック(中国経済の減速と人民元レートの下落)」で世界中を震わせた中国ですら、成長率は6.9%に加速した。

足元で順調な成長が続く中、エコノミストの見通しも総じて楽観的だ。IMFの経済予測(2017年7月時点)を例に挙げると、2017年の世界経済成長率は3.5%と、2016年の3.2%、2015年の3.4%を上回って着地する見通しとなっている。2018年は3.6%と、さらに成長が加速する見通しだ。しかしこのようにバラ色の世界経済見通しは、本当に実現するのだろうか? 見通しのどこかに落とし穴が隠されていないだろうか?

この論点を検証すべく、本稿では、現在の世界経済の加速は何によってもたらされており、それらには持続性があるのかを確認したい。結論を先取りすると、世界経済は現在3つの短期的な好材料に支えられた、いわば「いいとこ取り」の状況に置かれている。したがって、2018年以降も好環境が続くことを期待すると、少し肩透かしを食らうことになるかもしれない。

順を追って整理しよう。2017年の世界経済を加速させている要因として以下のものが挙げられる。すなわち、(1)米国を中心とした在庫の回復・積み増し(2)欧州を中心とした財政拡張(緊縮ペースの鈍化)(3)共産党大会を控えた中国経済の加速、である。