中国では海外への資金流出を抑制

最後に(3)共産党大会を控えた中国経済の加速について。中国では5年に一度、政治的指導者を決定する共産党大会が開催される。そしてこの共産党大会が開催される年は、政治的に景気を底支えする誘因が働きやすいとされてきた。

実際の数値で確認しよう。図表3は中国の景気循環信号指数(10個の主要な経済指標を合成したもので、日本で言えば景気動向指数のようなもの)を示しているが、赤丸をつけた共産党大会の年には、ほぼ例外なく景気が加速している様子が確認できる。1990年代以降で唯一例外的な動きを示したのは1997年だが、この年はアジア通貨危機の年でもある。外部環境が非常に悪かった割には健闘した、との評価が妥当だろう。

そして今回も、この「共産党大会の年は景気が加速する」という経験則が当てはまっているように見える。これにはもちろん異論もある。2017年に入ってからの中国経済は、消費を中心とした内需に支えられる格好で加速を実現させている。これだけを見れば、今年は単純に景気が良いだけであり、政治的なテコ入れにより支えられた成長ではないという見方も可能なのだろう。

しかし「2017年に入ってから、中国から海外の資金流出がほぼ完全にコントロールされている」という事実を加えれば、この異論は簡単に覆されてしまう。2015年8月の人民元レートの切り下げを受けて先安観が高まったことや、米国の金利上昇の影響を受けて、2016年には6,400億ドル(約70兆円)もの資金が中国から純流出した。しかし2017年前半の純流出額はたったの423億ドル(約5兆円)である。この資金流出のコントロールは2017年に入ってから政策的に進められており、この背景として、共産党大会を控えた中国政府による人民元レートの下落リスク等を抑制したいとの思惑が働いていても何ら不思議ではない。

そしてこの政策的指導の結果、行き場をなくした資金が中国内に還流し、投資や消費を刺激している公算が大きい。時を同じくして仮想通貨の相場が暴騰していたことや、2016年に政策的に抑制したはずの中国不動産の価格が再高騰していたことなどは、同政策と無縁ではないだろう。そしてこうした資産市場の動きが、資産効果を通じて中国内需要を刺激してきた側面も無視できないだろう。