政府は、犯罪集団が犯罪の準備段階で罪に問える共謀罪の趣旨を含む「テロ等準備罪」を定める法案を国会に提出、自ら所管する。しかし国会答弁が迷走。人権侵害や捜査権力乱用の可能性を指摘する声も多く、野党は具体的な犯罪例などを追及するが要領をえない。挙げ句に「法案については国会に提出した後、議論を重ねるべき」とする見解作成を指示し、報道機関に配布。「答弁能力のなさを棚に上げて質問封じ」と反発されると撤回。

法務大臣 金田勝利氏(AFLO=写真)

1995年自民党から参議院議員に初当選。2009年に衆議院へ。選挙に弱く当落を繰り返すが、去年の参院選では自民惨敗の東北で地元秋田だけが勝利。初入閣はその論功行賞とも。大蔵官僚出身で地元では政策通との評判もあるが、「法相はあまりにも畑違い」と安倍晋三総理の人事を批判する声も党内に広がる。

政府は一般の団体でも犯罪組織へ「性質が一変」すれば処罰対象だと説明するが、捜査当局が「一変」を恣意的に判断する危険はないと本当に言えるのか。安倍一強時代、法案は提出されたら成立する可能性大。今から議論は必要だろう。そんなときに「質問封じ」と言われる騒動だ。

かつて民主党政権では柳田稔元法相が「法相は答弁2つだけ覚えておけばいい」と失言して謝罪、辞任に追い込まれた。金田氏はどうか。「辞任する理由がない」と強気だそうだ。ある議員が嘆く。「最近は国民も怒らなくなった。政治の怠慢、欺瞞、傲慢、こんなものかと諦めているようだ」。我々国民の責任も重い。

法務大臣 金田勝利(かねだ・かつとし)
1949年生まれ。73年一橋大学経済学部卒業後、大蔵省入省。95年参議院議員初当選。2009年衆議院議員当選。16年8月、法務大臣で初入閣。
(AFLO=写真)
【関連記事】
「テロ等準備罪」を安倍政権が国会で通したい理由
なぜ政治家は“うちわ”を配ってはいけないのか
国会議員も紛糾!厚労省「原則禁煙法案」のハレーション
特定秘密保護法施行で「ゼロ」に向かう情報開示
「天皇の生前退位問題」安倍首相が早期決着を目指す理由