繁華街でも、住宅地でも、頻繁に見かけるようになった回転寿司のお店。登場した頃は寿司が回る光景は珍しかったが、今やなんの違和感もない。

もっとも、寿司の回転の仕方は様変わりし、通常のレーンと、客の注文で握った寿司専用のレーンを並走させている店もある。水産会社のマルハニチロの調査レポート「回転寿司に関する消費者実態調査2014」によると、最近では流れてくる寿司を食べるのではなく、食べたいネタを注文する人が全体の6割を占める。女性に限っては3人に2人が“注文派”だという。

食べたいネタを握ってもらう――。それは従来の寿司屋での注文の仕方ではないか。個々の客の注文に応えていたのでは効率が下がり、採算が取れるのだろうかと気になるが、実は「回転させずに注文に応じて握る」方式は回転寿司店にとってもメリットがあるのだ。

従来の寿司屋と回転寿司店を比べると、前者は少人数のお客の注文に応じて握る「少量・受注生産」。それに対して後者は、大勢のお客を相手に「このくらいは売れるだろう」という予測を立てたうえで寿司を握る「大量・見込み生産」である。

また、前者は値段が表示されていなかったりして敷居が高く、入りづらかったのに対して、後者は明朗会計で敷居が低く、目の前を寿司が流れる物珍しさも加わって、あっという間に大人気となった。

しかし、回転寿司のビジネスも成長期から成熟期に移行すると、客は目の前を流れる寿司を食べるだけでは飽き足らなくなってくる。それどころか、「この寿司はどのくらいの時間回り続けていたのか」「本当に新鮮な寿司なのか」という疑念を抱いて、手を伸ばさない人も出てくる。それが先の調査レポートの結果にも端的に表れているのではないか。