「相手の目を見て褒める」が正しいわけじゃない
「子どもを叱ってはいけない」はよく聞きますが、「子どもを褒めましょう」、これもよく聞きますよね。もちろん褒めることは大事でその点に異論はありません。
ただ「よい褒め方って何?」と聞かれたときに、皆さんならどう答えますか? 「相手の目を見て褒める」「何がよかったのか(そのプロセス)を褒める」……人によっていろいろ違いがありそうですよね。
相手の目を見る、は「相手は自分と同じように視線の持っている意味を理解しているはず!」という前提に立ちますから、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性がある場合はそのまま当てはめられないかもしれません。
プロセスを褒める、前向きに言語化するというのも、「こちらのことばを正しく理解し意図を読み取れる」ことが前提になるため、発達に遅れのある子どもに対して適切とは言い難くなります。褒める際に(注意する際も)気をつけておきたいのが、こちらの意図していないものに子どもが反応している可能性があることです。
よい褒め方の判断基準は「後の行動」
例えば、子どもの困った行動に対して「ダメでしょ!」と伝えても、逆に繰り返す、といった事例を考えてみましょう。親としては「(その困った行動を)やめて!」の意図があったとしても、「あ、親が相手をしてくれた!」と、親からの叱責を子どもがご褒美と捉えたら行動は増えてしまいます。
上手な褒め方だったかどうかは、褒めた行動(増えてほしい行動)が褒めた後に確実に増えている(逆にやめてほしい行動の場合はきちんと減っている)かどうか、に尽きます。
ときどき、「この子は注意しても逆に(こちらが)嫌がることを好んでする」「褒めてもまったくこちらの言うことを聞いてくれない」といったことがあります。
前者は別にこちらの感情を逆なでしようとしてやっているわけでも、おちょくろうとしているわけでもありません。子どもの意図と大人の意図が掛け違っているわけです。後者については、おそらく子どもは「褒められた」と感じていないのでしょう。感情論云々ではなく、褒める前後でどの行動が増えたか(あるいは減ったか)で判断しましょう。
不安の強い子どもの中には、少し難しい場面や自信のない場面での自分の行動後に積極的に「褒めて」と要求が出る場合があります。この場合の「褒めて」は「これでいい?」というコミュニケーション行動であり、コミュニケーションの受け手である大人は「より丁寧に正解(子どもがとるべき行動)をわかるように見せておく必要がある」と理解する必要があります。