社会保険料から逃れ続けることはできない
であるなら、時代の流れに抗うよりも先回りして壁を乗り越え、手取りがアップするまで働き、社会保険加入との一挙両得を狙うという選択をしない手はありません。週19時間程度に労働時間を抑え、かつ130万円に届かない年収で働き続けた先の老後は、常にお金に不自由する暮らしになってしまうからです。
夫はいずれ会社を退職し、任意継続被保険者を経て国保加入者となります。任意継続被保険者の間は被扶養者でいられますが、2年後には夫婦2人分の国保保険料を支払うことになります。75歳になると夫と妻それぞれが後期高齢者医療制度に加入し、保険料を負担します。ずっと社会保険料を回避し続けることはできません。
また、水道光熱費や食費など、生活費のベースが上がっていくと、妻の収入が老齢基礎年金だけでは自由になるお金が少なくなってしまいます。
老齢基礎年金だけの生活は心許ない
夫婦どちらかが自宅での暮らしが困難になり、高齢者施設に入ることになれば、月額14~15万円程度の費用がかかります(※8)。これは厚生年金受給者の平均年金月額に匹敵します(※9)。
もし夫が施設に入り、妻が自宅で暮らす場合、妻の生活費は老齢基礎年金だけで賄わなくてはなりません。ちなみに2024年度の老齢基礎年金は月額6万8000円です。不足分は貯蓄を取り崩すことになります。
自宅で訪問介護などを受けながら暮らす場合も、前述のように、労働力が希少性を帯びるわけですから、コストが高くなることは覚悟しなくてはならないでしょう。介護保険だけで賄えない場合は、保険外のサービスを調達する必要があるかもしれません。
このような高コスト時代の到来を見据えて、将来の年金が老齢基礎年金だけの人は、厚生年金加入者よりも老後資金を多く準備する必要があります。自前で積立をしようとすると、収入のうち使えるお金は減りますから、手取りが減少するのと同じ結果になります。しかも、収入を低く抑えると貯蓄や投資に回せるお金も少なくなります。
※8 みんなの介護「【一覧表でわかる】老人ホームの費用(種類別・都道府県別)」
※9 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」