日本人に染み付いた「ハード優先の思考」

令和の日本において優勢を誇っているのは、製造業と商社、金融である。日本では、かつての経済発展を支えた大企業が今も大きな影響力を有しており、基本的な社会構造がバブル前から変化していないことがうかがえる。「実体のあるもの」を作ることが尊重されると言ってもいい。

Windows95が爆発的な人気を博した頃、初めてパソコンを手にした人びとはWindows95を使うためにはNECやシャープ、富士通のパソコンを買わなければいけないことを知った。

その時、「日本のトップメーカーがアメリカのソフトを入れてパソコンを売るサービスを始めたんだな」という認識を持った人は少なくないだろう。これは、「(目に見える)ハード優先の思考」と言える。

しかし、パソコンが普及するにしたがい、ハードはソフトを活用するためのものに過ぎず、ソフトがなければただの箱であることに気付く。

アメリカはいち早くソフト優先の思考に切り替え、ファブレスの大企業が次々と台頭したが、日本は基本的にはハード優先の社会が続いていると言えるのかもしれない。それが良い悪いの話ではなく、あえて言えば得手不得手の話だ。

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いまだに残る財閥の存在感が日本の強みになっている

そのうえで、日本の経済界では、いまだに財閥の存在感が色濃く残る。三井グループであれば二木会といって、毎月第2木曜日にグループ企業の社長が集まっている。その直下に、シンクタンク三井業際研究所を有する。グループ間での情報のやり取りや、グループ間でのモノづくりの協力が行なわれやすい体制が整っているわけだ。

三菱グループにも三菱金曜会がある。こちらは毎月第2金曜日に三菱グループの中核となる27社の会長・社長が集まっての懇談昼食会が開かれる。

御三家と言われる三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行がトップに君臨し、さらに主要10社(三菱地所、三菱電機ほか)を加えた世話人会があり、そこに主要14社(三菱自動車、ニコン、ENEOSほか)を加えた合計27社で組織されている。銀行も含めた旧財閥構造がまだそれなりに生きていて、それがモノづくりに活かされている。

三井・三菱ともに閉鎖的で権威的、保守的と感じられるグループだ。こうした体制自体が、世界的に見て特異でしばしば批判の種にはなるものの、かえって日本の強みにもなっている。