収入アップや社会復帰への公的支援が必要なのに…

親に経済的に依存している未婚の低所得者のかなりの割合が、収入は低くても就業はしている。彼らに有効なのは、より収入の高い仕事へステップアップするための職業訓練や、介護サービスや公営住宅などの現物給付を含む金銭的支援だ。一方、ひきこもり状態の人や長期にわたって孤立無業状態にある人には、まずは社会とのつながりを取り戻すためのきめ細やかな支援が必要であろう。

どちらの支援も必要だが、対象となる層も取るべき対応も別物である。それにもかかわらず、親に経済的に依存している未婚の低所得者の経済的自立の問題を論じる際に、なぜか長期無業者を念頭に置いた社会参加に関する議論に話題がすりかわっていきやすい。数十万人を対象とした金銭的支援となると、どうしても財源の問題が避けられないため先送りされやすい、と考えるのは邪推だろうか。

生活保護の手前の段階で救済する制度がない

既存の社会保障の枠組みでは、就業はしているが所得が十分でない者に対する再分配がほとんどない。高齢でもなく障碍しょうがいもない場合、生活保護以外の制度がないのだ。

非正規雇用から失業した場合、雇用保険の失業給付金も十分にはもらえないことが多い(酒井2020)。2011年より施行されている求職者支援法は、この点の緩和を目指したものであるが、あくまで職業訓練の受講を容易にするための制度であり生活保障として十分とは言えない。生活保護基準にはぎりぎり入らないような、最貧困層のすぐ上の所得階層にいる現役世代に対するセーフティネットが薄い。

出所=『就職氷河期世代』(中公新書)、総務省統計局『就業構造基本調査』より筆者作成

このことは、2000年代に「ワーキングプア」という言葉が流行した時にすでに指摘されていたが、この20年でほとんど改善されていない。