歯を磨く時間は2分で十分

長すぎる歯磨き時間は、むしろ弊害のほうが多くなります。10分も歯磨きに時間をかければ、どうしても注意が散漫になります。ほかのことをしながらなら、なおさらです。自分では磨いているつもりでも、同じところばかり磨いているなど、磨き残しが出やすくなります。

もう一つの弊害は、知覚過敏になりやすいことです。磨きすぎて歯が削れ、歯の根元の象牙質が剝き出しになってしまうのです。象牙質には、神経につながる無数の穴があいています。歯に対する刺激は、この穴を通して神経に伝わります。そのため磨きすぎて象牙質が剥き出しになると、冷たいものやブラッシングなどの刺激で神経が刺激され、強い痛みを感じるようになるのです。

私のところに「むし歯で歯が痛い」と駆け込んでこられた方がいて、よく見ると磨きすぎによる知覚過敏だったケースが少なくありません。このような方は、使っている歯ブラシが硬めのことも多く、軟らかい歯ブラシを使うことをお勧めしています。

知覚過敏は一過性なので、時間が経たてば痛みはなくなります。とはいえ露出した象牙質から、むし歯になることもあります。磨きすぎかどうかは、見た目でもわかります。下の歯なら歯茎が下がり、上の歯なら歯茎が上がり、歯が長くなったような見た目になります。

また、象牙質の部分は茶色いので、茶色い部分が見えたら磨きすぎだとわかります。このような状態になったら、治すには歯茎の移植手術しかありません。そうならないためには、長時間の歯磨きはしない。イエテボリ法にあるように、むし歯を防ぐには2分も行えば十分です。

【処方箋】
歯磨き時間は2分で十分

「起床後の口の中はバイキンだらけ」は正しいが…

【カン違い】
朝起きて、すぐ歯を磨く

食前の歯磨きは酸蝕症になりやすい

歯磨きに関するもう一つ多いカン違いに、「朝起きて、すぐ歯を磨く」というものがあります。

写真=iStock.com/kazoka30
※写真はイメージです

寝ている間に、口の中はバイキンだらけになっている。気持ち悪いから朝起きたら、すぐに磨いてバイキンを追い出すというわけです。テレビの健康番組などで推奨することもあるようですが、歯の健康を考えるとお勧めできません。

朝起きたとき口の中にバイキンがたくさんいるというのは、間違いではありませんが、そもそも口の中には、つねにバイキンがいます。むし歯の原因となる、むし歯菌もいます。歯周病の原因となる歯周病菌もいます。とはいえ朝起きてすぐの歯磨きは、別のリスクを高めます。