アルバイト先の友人の証言

当初は遺体の損傷がひどいため、Mさんに対して“怨みを抱く人物”ではないかとの見方もされていたが、それに該当する状況や相手はいない。また、当日の彼女が帰宅するため通るルートに防犯カメラは少なく、彼女を捉えた最後の画像は、10月26日21時15分に、アルバイト先のショッピングセンターの従業員出入り口から出ていく姿だった。

Mさんがアルバイトをしていたのは、このショッピングセンター内のアイスクリーム店である。行方不明となった日に同店で彼女と2人きりで勤務していた、同じ大学の女子大生Aさんに、私は話を聞いている。

Aさんによれば、その日、Mさんの様子にとくに変化はなく、帰るときも、誰かと待ち合わせているような様子はなかったという。また、Mさんから交際相手がいるとの話は聞いていないと語った。

捜査の進捗状況について目ぼしい話が出てこないなか、11月30日には大学の寮に近い側溝で、Mさんのものとみられる左足の靴が発見される。現在、この靴はMさんのものだとは確認されていないとの説明に変わっているが、当時はMさんのもので間違いないと、捜査員が島根県警担当記者に語っており、発見場所が彼女の行方不明直後に捜索された場所であったことから、犯人が捜査のかく乱を狙って、後になってそこに置いたものでは、という話になっていた。こうした変遷からも、当時の捜査がいかに迷走していたかということが窺える。

猟師? 医師? ロシアの特殊部隊?

彼女の交友関係についての捜査が早々に手詰まりとなったことで、捜査本部は遺体の解体方法などから、犯人が猟奇的な趣向を持つ人物であるとのプロファイル結果をもとに、それに近しい人物を中心に探していた。

元捜査関係者は語る。

「周辺のレンタルビデオ店で“ホラー映画を借りた人物”や、刃物店やホームセンターで“鋭利な刃物を購入した人物”を捜すようになりました。浜田市内から臥龍山に向かう途中にあるNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)に記録されていた車両の持ち主への捜査はもちろんのこと、遺体があまりにも鮮やかに解体されていたため、犯人は土地勘があって解体方法を知る“猟師”や、解剖の知識に長けた“医療関係者”、さらにはロシアの“特殊部隊関係者”説まで出ていました。そんな思い込みが捜査の偏りを生み、犯人に辿り着けなかった要因との指摘があります」

写真=iStock.com/BestForLater91
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そして事件発覚から7年を経た16年の夏頃のこと。約40万件といわれるNシステムの記録を細かく解析していた、島根県警の捜査員が、Mさんが行方不明になった時期の前後から、浜田市内を頻繁に出入りする車両があることに気付くのだ。