香川2区の玉木氏、1区の小川淳也氏

香川2区選出の玉木氏は、隣の香川1区選出である立憲民主党の小川淳也幹事長と、とかく比較されてきた。玉木氏は財務省出身、小川氏は総務省出身。年齢は玉木氏が二つ上、初当選は小川氏が先。まさに水と油。民主党時代からお互いに強烈なライバル心を秘めてきた。

小川氏は、大島新監督のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』で、清濁をあわせ呑めない誠実で潔癖な理想家タイプの政治家として描かれ、全国的な知名度を上げた。とくに高齢世代を中心としたリベラル層に人気を広げた。今年9月の立憲民主党代表選への出馬を探ったが、推薦人を集めることができずに見送ったところ、党の刷新感を求める野田佳彦代表に一本釣りされて幹事長に抜擢された。

玉木氏は、先輩を押し退けても主役をとりに行く「ワンマンプレー」が時として反感を買い、立憲の野田代表や枝野幸男元代表ら「上の世代」に睨まれてきた。国民民主党の大半が野党第一党の立憲民主党に合流した際も、袂を分かって国民民主党に居残った経緯がある。小川氏が香川1区で敗れて比例復活を重ねたのと対照的に、玉木氏は初当選後は香川2区で勝ち続けている。選挙基盤の強さなら玉木氏に軍配があがる。

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公約を実現できなければ…

ちなみに私は香川県立高松高校で小川氏と同級生だった。小川氏の妻も秘書も同級生である。彼は当時から堅物だった。玉木氏は高松高校の2つ上の先輩で、私の姉と同学年だった。姉によると、当時から相当な自信家で「玉キング」と呼ばれていたそうだ。

政治記者としても同郷の知人としても、初当選以来、双方を長く眺めてきたが、ふたりの相性はお世辞にも良いとは言えない。民主党時代から衝突を避ける「大人の対応」を続けてきたが、一方は野党第一党の幹事長に就任し、もう一方は野党第三党の代表として、ともに自公過半数割れの難解な政局に立ち向かう今、二人の政治観の違いは覆い隠し難くなっている。

その重要局面で玉木氏を直撃した不倫スキャンダル。仮にこれが誠実さを売りにする小川氏だったら一撃で失脚だったろう。

玉木氏が今後、不倫スキャンダルをかわし切れるかどうかは見通せない。最終的には来年夏の参院選で有権者の審判が下る。とりあえず、一撃でノックアウトの事態は回避した。少なくともネットの若者・現役世代の多くは政治家に対し、私生活での潔癖さよりも自分たちの手取りを増やしてくれる実現力を期待している。この公約を実現できなければ、期待は一瞬にして失望に変わり、不倫スキャンダルへの批判が再燃する可能性もある。

玉木氏がこれを乗り越えて公約を実現し、打たれ強い政治家として大成していくのか。小川氏が誠実路線をさらに磨いて出世していくのか。二人の政治家の行く末は、日本の有権者が期待する政治家像を映し出しているといえ、とても興味深い。