なりたいのは、知の加工力を持つシニア

知識の多さではなく、知識をどのように自分なりに応用するか。その力が問われるなかで目指したいのは、「話が面白いシニア」だと思います。

シニア世代の頭のよさ=面白さだと私は思っています。膨大な知識を持つことを聡明であるとするならば、人は到底、AIより聡くなることはできなくなってしまいます。

若い世代がシニア世代に求めるのは、ただ知識を教えてもらう、ということでは決してないでしょう。高齢者に必要とされるのは、豊かな経験知に基づく「知の加工力」だと思います。

つまり、若者たちがシニアと対峙するときに聞きたいのは、その人ならではのストーリーや人生観なのではないでしょうか。単純な知識しか得られないのだとしたら、わざわざ人に聞かなくても、ネットでサクッと調べれば十分です。

和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)

これまでの長い人生で培ってきた経験知は、シニア世代の最強の強みです。それを生かして、ユニークな考えや発想を生み出してみてください。いわば、思想家を目指すのです。

独創的な考え方ができたり、面白い話ができたりする人はいくつになっても魅力的ですし、人が集まってくるでしょう。

実際に認知心理学においても、「頭がよい」とは知識が多いことではなく、その知識を使って推論できることであるとされています。知識を持つことそれ自体でなく、その知識をどう自分なりに素敵に発展させていくのか、ということにその人の知性が表れるのです。