「○○風」というメニューに期待してはいけない
ポテトコロッケ、鶏肉野菜炒め、ハンバーグ、いわしハンバーグ、メンチカツ、オムレツ、春巻、麻婆春雨、鶏肉と里芋の炒り煮、白身魚のフライ、餃子、豚汁、コンソメスープといった華やかなラインナップが供されることもある。
麺類を挙げればラーメン、うどん、スパゲティ、蕎麦、焼きそばとメリハリがある。ミートソース、五目、天ぷら、ジャージャー、きつね、南蛮……、いずれもこころ沸き立つような響きだが、名前どおりの期待が満たされるとはかぎらないと受刑者は言う。
特に身構えておきたいのが、洋風・和風・中華風、柳川風、すきやき風、さらにはハワイアン風、ガパオ風、ビビン麺風といった、○○風の献立だという。献立を組む立場としては少しでもと工夫を凝らしたい。給与される側は想像力をかきたてられ、そして裏切られる。切ないといえば、あまりに切ないやりとりだろう。
喜ばれるのが“ぜんざい”だ。甘く煮た小豆の餡は、コッペパンとマーガリンとの抜群の相性を誇る。アルコール類やスパイスといった刺激物から遠ざかって久しい受刑者たちにとって、“ぜんざい”にかぎらず甘味の魅力は絶大だ(味醂もアルコールだから使われない)。
「甘しゃり」を味わい英気を奮い立たせ、今日の活力とする。