高気密住宅は「日本の気候に合わない」は本当?

第二に、既存住宅の性能面の問題です。1981年以前の住宅は旧耐震と呼ばれ、耐震性能に不安があります。また古い住宅は、断熱・気密性能が低く、夏暑く、冬寒く、快適ではないということもあり、解体されて、最新の性能の住宅に建て替えられる傾向が強いのです。

第三の理由は、劣化対策が十分ではないということです。震災で倒壊・崩壊した住宅は、もともとの耐震性能不足だけでなく、構造材が腐っていたり、シロアリの被害により耐震性能が低下していたりしたことが要因になっているケースも少なくありません。構造材の劣化への不安から、リノベーションではなく、建て替えを決断するケースも多いようです。

住宅の長寿命化のためには、劣化対策が重要であることは、論を俟ちません。

そのためには住宅性能を高気密・高断熱にすることが大切ですが、高気密住宅については、日本の気候に合わない、また高気密化することで住宅が短命になるといった誤解をよく耳にします。

「世界最古の木造建築」は風をよく通すが…

高温多湿の気候の日本では、「気密性をいたずらに高めず、スカスカの通風のいい家にするとよい」と力説する方がいます。

その際によく持ち出されるのが法隆寺です。日本の高温多湿な気候では、カビや木材の腐朽やシロアリ被害を防ぐために、伝統工法の家はすきま風をよく通し、湿気を逃がす構造にすることで、1000年以上も持っているのだ、と。

法隆寺(写真=Nekosuki/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

確かにそれは間違っていません。ただし、それは室内外の室温差がほとんどないという前提の場合に成り立つことです。昔の家や寺社仏閣等の建物では、冷暖房をあまり行わないため、室内外での温度差が少ないですよね。

室内外で温度差があまりなければ、確かに、通風(正確にはすきま風)のいい家は木が腐らず、シロアリも発生せずに、長い間使うことができるのはその通りです。

ただ現代の住宅では、冬は暖房、夏は冷房をつけます。我慢の生活ではなく、きちんと冷暖房して、家全体を快適な室温を保つことは居住者の健康にとってとても重要です。

ちなみにWHO(世界保健機関)は2018年に公表した「住宅と健康に関するガイドライン」において、「健康を保つ最低室温は18度以上」これを強く推奨すると提言しています。