老後の収入減少に備えるために

私たちは、生きるため、あるいは楽しむために収入を配分し、暮らしを循環させていくわけですが、この循環を将来にわたって続けていくためには、収入をすべて使い尽くすのではなく、貯蓄や投資に回す部分を確保しなくてはなりません。なぜなら、誰もがいずれは年金だけで生活する時期がやってくるからです。

収入が縮小するということは、収入に対する「住まい」や「日常生活」の占める割合が高くなるということです。現役世代ならではの支出、例えば「保育・教育」などはなくなりますが、「健康」に関する支出が増えるかもしれません。そうなると、「娯楽・趣味」を縮小しなくてはならなくなります。家電製品の買い替えなど、年金だけでは賄えない高額の支出は、貯蓄を取り崩すことになるでしょう(図表2)。

したがって、現役世代にとって大事なことは、支出の配分をうまく調整し、貯蓄や投資に回すお金を生み出せる循環をつくり、さらにはそれをライフサイクル全体を通じての循環につなげていくことです。

支出に優先順位を付けざるを得ない

年間の収入はほぼ決まっていますから、支出項目のどれかが大きくなると、どれかが小さくなるのは必然です。膨張するのに任せていると、貯蓄ができないどころか、取り崩したり借金をすることになってしまいます。

そうならないよう、あらかじめ年間の支出総額に上限をかけ、「どうしても欲しいものがある」とか、「このチャンスに手に入れないと後悔する」と思ったときは、貯蓄や投資に回す金額が減らないよう、支出同士で折り合いをつけることが大切です。

たとえば、家電製品の買い替えが重なった年は旅行の規模を小さくするとか、新しく洋服を買い替えるのは先送りするといったことです。支出に制限がかかると、他の支出と競合状態にさらされますから、そうまでして欲しいものなのか、すでにあるもので代替できないか、購入を先延ばしできないか、などと対応策を考えざるを得ません。

そのようにして先送りした商品は、時間が経つとさほど欲しくなくなったり、別の欲しい商品に取って代わられたりするものです。