濃い味を好む消費者

ラーメンの○○系と聞いて、二郎系の他に、濃厚なラーメンの家系を思い浮かぶ人も多いだろう。両者はSNSで話題になることも多く、ラーメン界の二大勢力といえる。

「その横顔は異なります。ラーメン二郎と系列店は全国で40店程度ですが、味をリスペクトして展開する二郎系は全国にたくさんあります。

一方の家系は、1974年創業の吉村家(本店:神奈川県横浜市)を源流とし、「吉村家」の流れをくむ弟子や孫弟子の店が神奈川県を中心に広がっていったラーメンです。近年は大手企業によって運営されているチェーン店が多く、店舗数がうなぎ上りに増えています。

たとえば横浜家系ラーメンの町田商店(本社:東京都町田市)は全国に156店を展開する有力チェーンとなりました。店舗数では家系は二郎系よりもはるかに多いですが、ともに味に常習性がありリピーターに支持されています」

吉村家のラーメン(写真=Totti/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ラーメンの中身について、井手隊長はこう説明する。

「二郎系のスープは前述したように豚骨ベースのこってり醤油味。見た目マシマシ、野菜はもやし中心などビジュアルがわかりやすいのが特徴です。

家系のスープは豚骨中心の濃厚な味で鶏油(チーユ=鶏から抽出した油)が浮かんでいるのが特徴。盛り付けはほうれん草、チャーシュー、のり3枚が基本です」

福岡でも進む「豚骨離れ」

醤油・豚骨・味噌・塩系スープの主流やトレンドについても聞いた。

「一番多いのは醤油。スープのバリエーションも多く、新店も増えています。豚骨はコアなファンが多いのですが、さまざまな理由で新規オープンする個人店は少ない」

独特の香りを好む客はいるが、繁華街もちろん住宅街では敬遠されがちだ。ニオイの強さはもちろん、豚骨を超時間煮るガス代や、原材料費の高騰もあり、最近は豚骨のメッカ、福岡でも増えづらい傾向にある。

「そんな中では、大手チェーン店の『博多一風堂』『一蘭』が一定のファン層を広げています」

博多一風堂は昔ながらの豚骨ラーメン店のイメージを変え、女性1人でも入りやすくしたブランドとして知られている。

博多一風堂・上野広小路店(写真=多摩に暇人/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

「味噌ラーメンは主原料である味噌の風味が強く、どこにもない味にするのが難しい一面があります。『すみれ系』が強く、都心では『花道系』も人気です」

すみれ系は、1964年に札幌で創業したラーメン店「純連」をルーツとし、その家族が開いた「すみれ」とともにこの両店から派生したラーメン店の総称。花道系は、東京都中野区野方にある「味噌麺処 花道」から派生したお店の総称を指す。

「塩ラーメンは、味噌とは逆に素材の塩自体が主張しないのでスープで勝負。ただ、新店はあまり増えていない傾向です」