韓国の若者も同じマンガやアニメで育っている

ここで、日本でのK-POP人気に対して、韓国での『スラムダンク』人気を考えてみたい。

週刊少年ジャンプで連載されていた大ヒット漫画『スラムダンク』を原作とした映画『ザ・ファースト・スラムダンク(THE FIRST SLAM DUNK)』。日本では2022年12月に公開され、興行収入155億円超、1074万人を動員した(2023年8月時点)。

『ザ・ファースト・スラムダンク』は韓国でも大ヒットしている。1月に公開されると、日本のアニメ映画史上最高のヒットを記録。興行収入は400億ウォンを突破し、観客動員数は400万人を超えている(2023年3月時点)。韓国の人口は5174万人で、日本の人口は1億2570万人である(2021年)。両国でいかに『スラムダンク』が愛されたのかがよくわかる。

僕はあるSNSで、「韓国ではなぜ『スラムダンク』がそんなに人気なんですか?」と質問を書いてみた。「子どものころの思い出が蘇りました」というコメントがあったほか、ある30歳の韓国人男性からは興味深いコメントをもらった。

「映画を見てとても感動しました。小さいころには漫画を読んでいましたね。みんなで一緒に読んでいましたよ。当時は日本のアニメがとても人気で、『ドラゴンボール』も流行りました」

日本文化が解禁されてから26年がたった

コメントをくれた方はちょうど30歳で、僕と同い年。小学生の頃は2000年代の前半だ。僕が小学生のとき、韓国の本屋に行くと、『ドラゴンボール』と『スラムダンク』のコミックスがずらりと並んでいたのを覚えている。

なにより、『スラムダンク』は韓国式にローカライズされた。主人公の桜木花道はカン・ベクホ、流川楓はソ・テウン。名前が韓国式にされたのである。

『スラムダンク』人気には、韓国政府のある政策が関係している。1998年、当時の韓国大統領である金大中が来日し、衆議院での演説で「日本の大衆文化解禁の方針」を表明した。金大中大統領と日本の小渕恵三首相は、新たな日韓のパートナーシップを構築する「日韓共同宣言」を打ち出した。

それ以降、韓国では日本文化が解禁され、幅広く受け入れられた。現在にまでつながる『スラムダンク』人気の裏には、「日韓共同宣言」の影響がある。

近年の日韓関係は「戦後最悪」といわれるほど悪化した時期があった。しかし、「戦後最悪」の日韓関係のなかで、日本ではK-POPが爆発的に人気を博し、韓国では『スラムダンク』の映画が記録的なヒットとなっている。このアンビバレンス(相反する現象)はどのように理解したらいいのだろうか。