「カムバック採用」で、まさかの“お祈りメール”

当時、和田さんが素早く退職を決めた理由は他にもあった。和田さんが働いていた会社では、「カムバック採用」という、元社員を対象にした採用があった。退職後すぐには難しいが、「3カ月以上経てば、採用選考対象になる」というものだった。

「カムバック採用があるのは、社内のホームページを見て知っていたんです。実際にカムバック採用を使って戻ってきている人も周りにいました。まあ、だめなら戻ってくればいいやという考えで、手続きが面倒くさくて、LINEの嫌な人をブロックする感覚で退職代行を使って転職をしました」

しかし、転職した先では、即戦力として期待されていた分、前の職場より風当たりが強く、残業が当たり前の毎日になっていたという。

「『前の会社の方がよかったな』と思うようになりました。大手企業のグループだったということもありましたが、福利厚生がよかったです。新しい職場では、配属された部署の人たちは体育会系の人たちが多く、厳しいことを言われることが多かったんです」

前の職場では、「入ってきてくれる人が本当に少ない」というぼやきも聞いていたのもあり、「転職がうまくいかなかったら前の会社に戻ればいいだろう」とか「新しく入ろうとする人より、直近までいた自分の方が重宝されるだろう」とも考え、カムバック採用に応募した。

「自分は2年間も働いているし、大丈夫だろうという思いで戻ろうとしたんです。しかし、書類選考の段階で落とされました。不採用の通知、いわゆる“お祈りメール”が来たのと同時に、電話では『以前働いていたときのコミュニケーション不足』が理由だと知らされました」

最近、多くの企業で採り入れているカムバック採用とはどういったものなのか。若者の就職事情などに詳しい「リクルート就職みらい研究所」の栗田貴祥所長は、

「カムバック採用は、アルムナイ(卒業生)採用とも呼ばれる採用方式です。今は企業も人材に多様性を求める時代ですので、さまざまな理由で企業を出て行った人たちでも、外でいろいろなことを経験・吸収して戻ってきてくれれば、それだけで会社の多様性が増します。もともと企業にいた人を採用するので、企業の理念や目標などを理解しやすく、新しく育てていく必要がありません。不況+人材難に悩む企業にとっては、戻ってきてくれるということはとてもありがたいことではあるんです」