カミングアウトが難しいからこそのシステム

同性愛者の存在を日常的に肌で感じていたアメリカ社会では、そもそも、「友情結婚」は存在しない。必要がないからだ。むしろ、カミングアウトが難しい社会だからこそ生み出された独特なシステムに、中村さんは惹きつけられた。

「やろうかなと思ったけど、私は当事者ではない。どうしようかと思い、友情結婚を実際にしている人を仲間に入れたいと思いました」

そこで、友情結婚をしていると発信している人たちにメールを送った。

「ノンケですが、友情結婚に興味があり、話がしたいです」

唯一、返してくれたのがゲイのケンさんだった。初対面と思えないほど、話が合った。それは、やりたいことが、一緒だったからだ。

ケンさんは友情結婚の当事者で、女性と結婚し一緒に暮らしていた。経験者だからこそ、友情結婚の大事さもわかるし、それゆえにきちんとしたシステムの必要性を痛感していた。「僕はやってみたいけど、当事者で、誰にも言ってないので、表立ってはできない」

「じゃあ、代わりに私がやります。アイデアをください」

ここが、「カラーズ」の始まりとなった。

最低限のお金さえあればいい

「多分、ケンのような人は、いっぱいいたと思う。ただ、やる人がいなかった。私みたいな、変なノンケの人間が。ケンがいなかったらやらなかっただろうし、自分がいなかったら、形になっていなかったと思う」

追い求めていた、起業の目的は決まった。業種は、結婚相談所だ。

写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
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「立ち上げのためにケンといろいろ詰めて、社会起業大学でビジネスを学んで、結婚相談所のノウハウは『日本仲人連盟』に50万円を払って、登録して学びました」

起業に当たり、金銭面でどれほどの負担を覚悟したのか。資金繰りの心配はなかったのか。

「結婚相談所開設って、まず、お金がかからないんです。集客も、私が発信すればいい。だから、私の人件費、つまり、生きていくための最低限のお金さえあればよかった。ホームページもケンと一緒に作って、これが月に1000円ぐらい。社会起業大学の先生に、起業1年目なら経費の200万円は戻ってくるという経済産業省の補助金を教えてもらい、これを受けられたことも大きかった。経産省の補助金が下りたということは、“偽装結婚”だとは言われないから」