「パー券購入」「公費支出」こそ取り上げるべき

これまでの斎藤知事の言い分は、「法的にはすべて正しく処理していること」である。「法律違反は犯していない」と断言している。

そもそもパワハラやおねだりなどは公益通報制度の対象に該当しない。

同制度が対象とするのは500本の法律違反であり、犯罪行為や過料を受ける行為である。

元西播磨県民局長が告発した7つの疑惑のうち、法律違反に当たるのは「政治資金パーティー券購入」と「公金横領、公費の違法支出」しかない。

その他の告発は、斎藤知事が「誹謗中傷とも取れる」と表現するような怪文書に近いものだった。

元西播磨県民局長による個人的な恨みや不満が随所に見られ、5期20年の長期政権を敷いた井戸敏三・前兵庫県知事(78)に近かった人物だと推測される。

斎藤知事に辞職を迫る包囲網の裏側には政治的な思惑が透けてみえていた。

だからこそ、公益通報制度に該当する「政治資金パーティー券購入」と「公金横領、公費の違法支出」の疑惑はちゃんと解明すべきである。

写真提供=共同通信社
取材に応じる兵庫県知事選に初当選した斎藤元彦氏=2021年7月21日午後、大阪市

9月9日公開のプレジデントオンライン(なぜ「兵庫県知事のイス」にしがみつくのか…「おねだり」「パワハラ」と言われても斎藤元彦知事が辞職を拒むワケ)で紹介したように、ことし2月県議会で、ひょうご県民連合(立憲民主党系)の上野英一県議は、詳しい手口には触れなかったものの、片山前副知事らが告発文書で指摘した2つの疑惑に関与していたことを取り上げていた。

もし、告発文書にあるような法律違反の疑いを少しでも承知していたならば、上野県議の追及も変わっていたのかもしれない。

兵庫県の膿を出し切る機会は失われる

県議会の役割は、知事と県議による本会議での論戦によって、県政の発展に結びつけることである。

となれば、9月県議会本会議で法律違反とされる2つの疑惑を取り上げて、斎藤知事へ厳しい責任追及を行うのが筋である。

その論戦の中で、2つの疑惑に知事の関与が疑われるのならば、斎藤知事の政治姿勢を問題にして、不信任決議案を提出しなければならない。

しかし、初日の19日に不信任決議が成立すれば、斎藤知事は29日までに議会解散をするかどうかの選択を迫られる。 当然、代表質問、一般質問はすっ飛ばされ、議会として斎藤知事を追及する機会は失われる。

維新の会は真実の追及よりも、政治の主導権争いを優先して、斎藤知事の辞職を求めた。

県議会全体で「兵庫県の闇」の部分をうやむやにしてしまえば、多くの県民の期待を裏切ることになる。

斎藤知事を辞めさせることで、「真実はどこにあるのか」(維新の会)はわからなくなり、長年のうみを出し切る機会は永遠に失われてしまう可能性が高い。

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