納税義務者の15%しかやっていない

さて一方、ふるさと納税の制度的な趣旨は、国民それぞれが自発的にお世話になった地域、応援したい地域を支援するという点にある。魅力は返礼品だけじゃない。制度の趣旨に基づくメリットがさらにある。それは寄付の使い道を指定できることだ。

たとえば、私が住民票を置いている北海道大樹町なら〈子育て・教育の支援〉〈農林水産業の振興〉〈ロケット開発プロジェクト〉といった具合に計7つの選択肢が用意されている。つまり自分の寄付金に明確な役目を持たせることができるのだ。

ご存じのとおり、この国では税金の無駄遣いがあふれている。閑散とした公共施設。しょうもない地域振興イベント。まったくもって無駄だ。私たちの納めたお金が捨てられているようなものだ。しかし政治家や官僚にとってそれは無駄ではない。利権につながるからだ。かくして今日も明日も私たちのお金は勝手に溶かされていく。

でもふるさと納税なら、私たちのお金に意志を込められる。社会に有意義な貢献ができる。2022年度のふるさと納税の利用者数は約890万人(総務省調べ)。納税義務者のわずか15%だ。あまりに少ない。居酒屋で税金の不平不満をこぼすくらいなら、ふるさと納税をしよう。そして投票にも行け。すべては自分自身のためだ。

提供=徳間書店

ふるさと納税の狙いは「ステルス地方分権」

菅義偉元首相が総務大臣時代に打ち出し、官房長官時代に強化したふるさと納税制度。この制度の真の狙いは”ステルス的地方分権政策”だと私は睨んでいる。

多くの人はふるさと納税について「特産品がお得にもらえるサービス」くらいの認識だろう。では、これがなぜステルス的地方分権政策なのか。

日本は政治の権限が政府に集中した、いわゆる中央集権的な体制にある。政府が政策を決め、地方自治体はそれに従い仕事をする。戦後、日本が目覚ましい経済復興を果たせたのは、政府の統率力のもとで一丸となれたからだ。

しかしその反面、中央集権型には地域それぞれの特性に対応できないという弱点がある。高度経済成長を経て日本が成熟期を迎えたころから、今度はその弱点が深刻な影を落とすようになった。地域社会ごとの志向や課題がどんどん多様化し、全国画一的な基準がほとんど通用しなくなったのだ。事情はいまも変わらない。むしろ、さまざまな事柄が急速に変化しているなか、状況は悪化の一途である。