子どもへの影響

前出のNHK調査にもあったように、夫婦別姓選択に反対する人々は「夫婦が別姓になれば、家族の一体性が損なわれる」と主張する。その結果、子どもが犠牲になるという見方もある。しかし、「損なわれる・犠牲になる」という判断を誰が行うのかが大きな問題だ。これを個々の家族ではなく、国が判断し、規制すべきというのは全体主義だろう。

もちろん、児童虐待を行うような親に対しては、政府による児童保護策が必要だが、そうした親と夫婦別姓を選択する夫婦を同列に扱い、自分の子どもの利益を損なっていると言えるだろうか。親と子どもの姓が異なると、非嫡出子と間違えられて子どもがいじめられるという意見もあるが、それは話が別だ。いじめは、いじめ自体を止めさせる対策を別個立てればいい案件で、別姓OKかNGかを国が国民(各家庭)に干渉する権利はない。

別姓選択は規制緩和

夫婦同姓制度の現状を重視する論者には夫婦別姓選択がイエ制度を壊すための女性運動家の主張という前提があると思われる。

しかし、少子化社会では、一人っ子同士が結婚すると、いずれかのイエが絶えてしまう場合も少なくない。長年続いていた家系を自分の代で失うことは先祖に申し訳ないと考える当事者にとって、ひとつの解決策は、夫婦別姓を選択し、複数の孫にそれぞれの家を継いでもらうことだ。

そうした意味で、夫婦別姓選択制度の実現を待ち望んでいる人もいる。このように、イエ制度の存続を望む人々と否定する人々の双方に役立つことが、夫婦別姓選択とも言えるのである。