嫌な人間関係からは逃げればいい?
多くの人は、思い通りにならない人間関係の原因を、自分ではなく相手に求める。
「あの上司は性格が悪いから」「あの部下はバカだから」などと言って、自分の意見が通らない理由を、アイディアや意図が上手く伝わらない理由を、相手の能力や性格のせいにしてしまう。そしてあるいは我慢して、あるいは不貞腐れたり、キレたりしてストレスを抱えて身心を病んでしまったりさえする。
だから近年、巷には「嫌な人間関係からは逃げればいい」的なメッセージが溢れている。
確かに「逃げればいい」は、本当に精神を病んでしまった時には救いになる。
けれども、例えば歯に痛みを感じていながら、「痛みの原因はオレじゃない、歯周病菌だ!」といって治療せずに放っておいても痛みが治らないように、人間関係の煩わしさを他人のせいにして逃げていれば、いつまでたっても苦痛は消えない。ビジネスマンとしての成長もない。
少しでも痛みを減らし、良好な人間関係を構築したければ、痛みの根本原因に真正面から向き合うことが大切だ。
なぜ他人と衝突が起きてしまうのか
ブッダは、人間関係の中で衝突が起こる原因は、私たちの心がわがままで、すぐに比較したがる性質を持っているからだと説かれた。それぞれを「我」と「慢」と呼ぶ。
「我」とは、「私こそはこの世でもっとも優先されるべき、大切にされるべき優れた存在である」という感覚。「慢」とは、そんな思い上がった「我」が、他人と比較すること。
私たちは他人に接するとそれが誰であれ、瞬間的に「自分より優れている」「自分より劣っている」「自分と同じぐらい」という三つのカテゴリーに分類する。
そして、優れた相手の前では媚びたり卑屈になり、劣っていると感じた相手には、見下したり、傲慢な態度をとり、同じぐらいだと感じた相手には、ライバル心を持ったりするのだ。