政府に介入されないほうが重要
「日の丸液晶」を目指した「ジャパンディスプレイ(JDI)」は、経営難が続く。同社は、ソニーグループ、東芝、日立製作所が行なっていた液晶画面事業を合体して2012年に作られた。産業革新機構が2000億円を出資し、国策再生プロジェクトとしてスタートした。
ところが2018年12月10日、産業革新投資機構(産業革新機構が改組された組織)の民間出身の取締役全員が辞職。
2019年には危機的な状態になり、産業革新投資機構から追加の出資がなされた。赤字の民間企業に国の金を投入し続けることに対して批判が集まった。
高度成長期においては、日本の製造業は国の直接介入を拒否した。それを象徴するのが「特振法(特定産業振興臨時措置法)」だ。
1962年、通商産業省は外資自由化に備えて日本の産業の再編成を図ろうとし、「特振法」を制定しようとした。しかし、当時の経団連会長石坂泰三氏は、これを「経済的自由を侵害する統制」「形を変えた官僚統制」として、退けてしまったのである。外資による買収を防ぐより、政府に介入されないことのほうが重要と考えたのだ。
日本の半導体産業が弱体化した理由
この当時、政府による保護策の対象は、高度成長に取り残された農業だった。ところが、1990年代の中頃から、この構造が変わってきた。競争力を失った製造業が政府に救済を求め、政府がそれに応えて介入するようになってきたのだ。
しかし、日本の製造業が競争力を失ったのは、中国の工業化などの大変化によって、世界の製造業の基本構造が変わってしまったからだ。それは、補助金で救えるものではない。
日本の半導体産業が弱体化したのは、補助金が少なかったからではない。補助金漬けになったからだ。「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう。
しかし、日本の半導体関連企業のすべてが輝きを失ったわけではない。
最近の半導体ブームの中で脚光を浴びているのが、半導体製造装置大手の東京エレクトロンだ。
同社の時価総額は10年で16倍となり、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループに続いて、時価総額が日本で3番目に大きい企業となった。半導体の主要4分野の製造工程で世界1位、悪くても2位の装置を多数持つ。とりわけ最先端の半導体製造に不可欠のEUV(極端紫外線)向けは、シェア100%であり、世界をリードしている。